とうとうこの日が来てしまった。
明日の放課後とか言わなければよかったなぁ。
あっという間にこの日が来てしまった。
さすがに一緒に帰る気がしないから、公園で待ち合わせることにした。
最後まで笑顔で頑張れ自分。

「お、おまたせ善逸くん」
「おそいよ、名前ちゃん」
「ごめんね・・・」

いつか同じようなやり取りをした気がするな。
あの時とは逆だけど、それも懐かしい。

そういうやり取りも今日で最後だと思うと少し寂しいな。
私たちはベンチに座る。

「少し、お話しない?」
「お話?名前ちゃんどうしたの?」
「・・・善逸くんに契約交わした日覚えてる?」
「あれは強烈だったからなぁ、忘れるわけないよ」

それでもそうだ。今思い出しても失礼としか思わない。
よく考えたら勢いでよくできたもんだ。

「女の子から呼び出されてるって言われて来てみたらいきなり土下座するんだもん」
「あはは、あの時は必死だったからね」
「土下座したあとに契約彼氏として付き合ってほしい!って言ってくるからね。そこは嘘でも彼氏として付き合ってほしいって言って、そのあと適当な理由で別れればよかったのにね」
「うぅ・・・そこまで考えてなかったよ」
「俺は正直な子だなぁって思った」

懐かしそうに笑っている彼を見ていると胸がキュッとなる。
最初にそんなことを思ってくれるなんて、いい人過ぎる。

「長い間付き合わせてごめんね」
「えぇ?長いかなぁ。俺は全然短いと思ったよ」
「3か月以上も付き合わせてたら長くないかな・・・?」

私の感覚がおかしいのだろうか?
好きでもない人と3か月も彼氏の振りをするなんて中々できないことだと思うけど。
でも、もう彼に気になる人がいるなら、苦痛になってしまうだろう。
私は泣きそうになる顔を無理矢理笑うにする。

「私、すごく楽しかった」
「俺も名前ちゃんと一緒にいるの楽しいよ?」
「でも、もう一緒にいるのが苦しいから契約を終わらせたい」
「・・・なんで?」

そりゃ気になる子がいる人から奪おうなんて思わないから。
私にはそこまでの気力がない。
そっと私は彼の手を握る。最後のぬくもりを忘れないように。

「今日で契約終わりです。善逸くん、今までありがとう」
「俺はこのまま終わるなんて嫌だよ」

善逸くんは握る手を強める。まるで私を引き留めるようだ。
しかし私はその手をそっとはがす。

「善逸くんは気になる子がいるんでしょ?私応援してるから、がんばってね」
「名前ちゃん何か勘違いして・・・」
「ごめん、さようなら」

私は最後まで話を聞かずにそばを離れる。
そしてそのまま走って公園を後にする。
私の涙腺はもう限界だった。
家についたとたん、涙が溢れる。

「あーあ、こんなことしなきゃよかった」

後悔先に立たずである。
しばらく何も考えたくないや。
私は自分の部屋に戻ってベッドに寝そべる。

携帯がずっと光っているけど、取る気にならない。
私はそっと目を閉じる。

「・・・少しだけ、一人にして」

私のつぶやきは部屋の中に消えていった。


さようならの時間だね
今日で私の日常の一部が消えてなくなった。


*PREV NEXT#

Bookmarknamechange


 

TOP