寒い・・・
今は冬だから寒いのは当たり前なんだけど、それ以上に寒い気がする。
しかも心なしかボーっとする気がする。

「風邪ですね」
「やっぱりそうですか?」

念のため保健室で熱を測ったら案の定風邪を引いていたようだ。
今日は善逸くんと帰る約束していたのになぁ、残念だ。
一緒に帰れないことを連絡しておこう。
少し保険室で休ませてもらってから帰ることにしよう。
薬を飲んだせいか、眠くなってきた。

「ううん・・・」
「あ、起きた?」

パチリと目が覚めて、横を見るとよく知っている顔があった。
あれ?今日帰れないって送ったはずなのにな。
なんでここにいるんだろう?

「あれ?善逸くん?」
「おはよう、名前ちゃん、調子はどう?」
「さむい・・・」

先程よりかはましになったが、寒気がまだある。
というか今何時だろ・・・

「善逸くん、今何限目とかわかる?」
「そろそろ6限が終わるから、ほぼ放課後みたいなものだよ」
「あれ?じゃあ善逸くん授業は?」
「あー、うん、サボりました・・・」

なんていうことだ。割と寝てしまったなぁ。
しかも善逸くんが様子を見るためにサボるなんて申し訳ない。

「ごめんね?わざわざ来てもらっちゃって」
「彼女を放っておく彼氏とかいる?」
「ふふ、いないかもー」

熱で頭が馬鹿になりそうだ。
やり取りが本当に付き合ってるみたいで、おかしくなる。
そんなことされたら期待してしまうじゃないか。

「でも、風邪移しちゃうから帰ったほうがいいよ?」
「大丈夫だよ、俺身体強いから!」
「そ、そう?なら帰ろうか・・・?」

教室にカバン置いたままだから取りに行こうとしたら、すでに用意されていた。
私が寝ている間に友達が置いておいてくれたらしい。
来てたなら起こしてくれてもよかったのにな。

「あ、名前ちゃんカバン俺が持つから」
「そこまでしなくても大丈夫だよー」
「だーめ!病人は言うこと聞いて?」
「・・・はい」

なんだか甘やかされている気がする。
でもあまり力が入る気もしないから私はお言葉に甘えることにした。

「今日は名前ちゃん危なっかしいから、家まで送るよ」
「えっ!?さすがにそこまでしてもらうわけには・・・」
「いいの。俺がしたいだけなんだから」

なんだか今日の善逸くんは強引だなぁ。
たまにはこういう日もあってもいいかもしれない。

「じゃあ、帰ろうか」
「っ!?」

ひょいと彼が私をおんぶする。
私は頭が真っ白になった。
パンツ見えてない?あ、中にスパッツ履いてるから大丈夫だ。
いや、そんなことより。

「さ、さすがに恥ずかしい・・・!」
「病人を歩かせるわけにはいかないからねえ、そこは我慢してね」

彼の背中の暖かさに、私はおもわず頬を寄せる。
今日は全部風邪のせいにしよう。
私は手をぎゅっと彼の首に回す。
善逸くんは一瞬びくっと身体を震わせたが、それ以上なにも言わなかった。


ぬくもりは裏切らない。
今だけはこの暖かさを独り占めさせて



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