今日は雨の予報なんてなかったのになぁ・・・
外を見るとシトシトと雨が降っている。
今日は善逸くんは委員会があるって言っていた。
だから終わるまで待ってるよって教室で待っていたらこの有り様だ。
暇すぎて私は机に突っ伏していた。

「善逸くんまだかな・・・」

教室はもう私一人だけだ。
放課後はちらほらと人はいたけど、それもしばらくしたらいなくなっていた。
一人きりとなると、なんとなく寂しい気持ちになる。
そしてこの雨だ。置き傘とかあったかなぁと考えてしまう。

ふと友達が言っていたことを思い出す。

「名前は彼氏とどこまで進んでいるの?」
「んー?どこまでだろうねぇ」
「まさかまだキスすらしてないとかないよね?」
「あ、あはは、まっさかぁ」

そのまさかだよ。手までしか繋いだことないわ。
むしろどんだけ進んでいるんだ君たち

キス・・・かぁ
できることならしてみたいけど、そんなことできるわけないよなぁ
つつ・・・と自身の唇をなぞる。
彼の唇は柔らかいのだろうか。

「名前ちゃん?唇なんて触ってなにしてるの?」
「!?善逸くんいつの間に!?」
「今さっきだよ、話しかけたのに名前ちゃん反応なかったから」
「ご、ごめんね。委員会おつかれさま」

私が誤魔化すように言葉をかけるとありがとうってニコッと笑う。
じゃあ帰ろうかって言おうと思ったけど、そういえば雨が降っているんだった。

「雨降ってるけど、善逸くん傘持っていたりする?」
「ごめんねぇ、今日晴れって聞いてたから持ってきてないや・・・」
「だよねぇ。私も持ってきてないや・・・」

二人で考えた結果。職員室に傘を借りようという話になった。

「置き傘あってよかったねぇ」
「まさか1本しかないとは思わなかったけどね・・・」

職員室に行って傘を借りるところまではよかった。
しかしストックが1本しかないと言われてしまった。
でもないよりかはいいだろうということで借りてきたのである。

「傘、善逸くん使っていいよ?私走って帰るし!」
「どういう考えでそうなるの!?そんなことさせるわけないじゃない!」
「あ、そうだよね。相合傘すればいいのか」

じゃあ行こうかと手を繋いで外に出る。
傘が少し小さいせいか、いつもより密着している気がする。
雨が降っているせいで普段より寒く感じる分、彼の体温が暖かい

「善逸くんって、暖かいね」
「なに?それって褒めてくれてる感じ?」
「冬とかすごく暖かくていいね」
「また流されたの?俺?」

そんな会話をしながら歩いていると前にもカップルが見える。
周りが見えていないのか、傘を少し傾けて顔がくっつくのが見えた。
ちゃんと見えてはいなかったけど、キスしたんだろう。

「なにあれ!?なんかすごい青春みたいな感じしない?見せつけられてんのか?」
「そ、そうだね。なんかすごい所見ちゃったね」

でも恋人ならそんなこともできちゃうんだな。
私には少し羨ましかった。
無意識に手を繋ぐ手に力が入る。

「名前ちゃん?」
「ううん、なんでもないよ。かえろ?」

善逸くんが少し心配そうに顔を覗き込むけど、私は誤魔化すように笑った。

「明日は晴れるといいね」
「そうだねぇ。天気予報だと晴れらしいよ」


冷たいキスでいいから、してみたいなんて
言えるわけない。


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