つんつん、つんつん。
私はどこぞの蟲柱様の真似をして腕あたりをつつく
しかし反応はない。つつかれてるの知ってるくせに

「おーい?起きてますかー?」
「起きているから少し邪魔しないでくれるか・・・」

そう困ったように返事をするのは私の同僚の竈門炭治郎である。
彼は大層人気者で時間があるとたくさんの人に手紙を書く。
返事もくれない水柱様にも送っているらしい。なんて律儀な人なんだろう。
隣にいる私には目もくれない癖にね。

「そんなに文通が好きなら、私もこれから文通でやりとりするもんね!ふん!」
「えっ?どういうことだ名前?ちょっと、待ってくれ」

追いかけようとしてくる彼を無視して扉をスパンを閉めて出ていく。
彼が人気者なのは知っているし、人脈が広いのはいいことだと思う。
けれど生身の人間が隣にいるんだから、ちょっとは気にしてくれてもよくない?
こうなったら文を書いて鎹鴉に頼んで送ってもらおう。

私は自分の部屋に戻ってさっそく紙の用意をする。
いざ誰かに手紙を送るとなると何を書けばいいのだろうか?
面倒くさがりの自分は、送るより会いに行ったほうが早くない?精神なので難しいものである。

「うーん、なんて書けばいいのかなー?初めてだし、無難な文でいこう」

文才のぶ文字も持っていないので、当たり障りのない挨拶から始めることにした。
内容も簡素なものである。

(初めて筆を取るのでご容赦ください。こんにちは。最近は夏も近づいて暑いですね。お身体にはお気をつけください)

まぁ、こんなもんでいいだろう。これを私の鎹鴉に頼んで届けてもらう。
そんなに文通が好きなら私も会わずにしばらく文通で返してやろう。
そう思っていたら次の日には返事がきた。鎹鴉ってしゃべるだけあってすごいんだなぁとしか感想がでなかった。

ふん、文だと大層お早い返事だこと。
普段みんなにどんな文を書いているのかお手並み拝見といこうじゃないか。
鎹鴉にお礼をいい開けてみると一言しか書いていなかった。

(ごめん)

なにが?という思いが率直な感想である。
この前のことに関して?それとも文すらごめんってか?
真面目な彼のことだから答えは前者であることは間違いないだろう。
それにしても一言って少なすぎない?

「そんな一言で許されると思っているのかな?単細胞か私は」

それでも少しだけ意固地になり過ぎたかなと少し反省する。
炭治郎が別に悪いわけではないし、作業中にお邪魔した私が悪いのはわかってる。
かまってもらえなくて不貞腐れるなど子供のすることだ。

「なんか色々と考えていたら、どう考えても自分が悪いよね・・・」

謝罪するなら直接言いにいって、今度ご飯でも奢ろう。
そう思い立って彼の部屋を目指していく。
すると丁度部屋から出てくる彼が見えた。彼も私に気付いたようでピタリと止まる。
お互い少し沈黙したあとに私は頭を下げて口を開く。

「「ごめん」」

同時に言葉が重なるのが聞こえた。
私はバッと顔を上げるとなぜか向こうも頭を下げている。

「え?なんで炭治郎があやまるの?これは私が悪いよ」
「いや、隣に居たにも関わらず文に夢中になってる俺のほうが悪い」
「いやいや、私が」

お互い謝りあっているのがおかしくて二人で笑った。
なんであんなことで怒ってしまうのかわからなくなるくらいには。

「やっぱりさ、私は手紙なんて書く技量なんてないし、こうやって炭治郎と話すのが楽しい」
「俺も名前となら直接話すほうが好きだよ」

好きって言葉に少しドキッとした。
彼にとってなんてことない言葉のはずなのになぜ反応してしまったのだろう。

「どうした?名前」
「ううん、なんでもない。お詫びにご飯奢るから行かない?」
「奢ってくれるのか?なんか申し訳ないな・・・」

いいのいいの、と私は言って彼の背中を押す。
少しの胸の高鳴りを隠しながら、今日は何を食べようかなと考える。


*PREV END#

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