今日は約束のお出かけの日だ。
男の子と休日2人きりでお出かけするのは初めてなので緊張する。
私は部屋にある鏡の前で服装をチェックをする。

「この格好変じゃ・・・ないよね?」

くるりと一周してよしと意気込む。
これが本当のデートだったらいいのにな・・・
でも、これは私のせいでもあるからそんな贅沢は言えない。
先のことは今は考えずに今日を楽しもう。

「名前ちゃーん!おまたせ!」
「おそいよ善逸くん」
「ご、ごめんねぇ!?」
「ふふ、嘘だよー」

約束の時間の少し前に来た彼をからかってしまった。
遅れてなどいないのに謝るなんて腰が低すぎる。
そんなところも彼らしくて心がポカポカとした。

「今日はどうする?何するとか決めてる?」
「そうだねぇ、今日は水族館に行きたいんだけど、どうかな?」
「わ!いいね!私水族館好きなんだ」

行くところは決まったので、私たちは目的の場所へと向かう。
今日は学校ではないので、手を繋ぐことはない。
それが少し寂しくもあった。
私は先に進む彼の背中を追いかけていく。

「か、かわいい・・・!」
「ペンギンが行進してる所なんて中々見れないもんねぇ」
「目の保養だ・・・!かわいすぎる」

水族館なんて久々に来たからテンションが高めになってしまう。
中々見れない生き物や定番の人気生物を見たり、どれも見てもおもしろい。
ふと気が付いたが私ばかり楽しんでいないだろうか。
そう思うと少し申し訳ない気持ちになった。

「どうしたの?名前ちゃん」
「いや・・・私ばかり楽しんでないかなって・・・」
「えぇ!?そんなこと考えてたの!?俺も楽しいに決まってるじゃない!」
「そ、そうかな?ならよかった」

私はホッと胸を撫でおろした。
日頃こんなことに付き合わせてるのに、休みの日ですら自分ばかり得している気がする。
今度なにかお菓子でも渡そうかな・・・

館内をぐるぐると回っていると、深海魚などがいる少し暗い場所に来た。
土日のせいもあるのか、人は多い。
明るい場所ならはぐれることはないけど、暗い中だとはぐれてしまいそうだ。
手を繋いだほうが早いけれど、本当は付き合ってないからそんなことできない。
だから私はなるべく彼を見失わないようにするしかない。

「名前ちゃん、あんまりここ好きじゃない?」
「え?そんなことないよ?でも少し暗いから善逸くん、見失いそうで」
「あー、なるほどねぇ。それならさ」

ぎゅっと手を握られる。
私が躊躇していたことを容易くしてくる。
でも今は学校じゃないけどいいの?と彼を見てしまう。

「はぐれないようにすれば大丈夫なんだよね?名前ちゃんは嫌?」
「そ、そんなことないです!むしろありがたいです!」
「なんで敬語なの?」

変なのーって言いながら彼は歩いていく。
ぎゅっとつながれた手は少し暖かい。
私はまたこの思いを抑えようとする。止められないとわかっていても。

水族館を見終わり、私たちは公園のベンチに座る。

「いつもここに来るから、締めはココがいいなぁって」
「確かにそうだよね。いつもここで話したりするから落ち着くね」

私たちは他愛のない話をする。
いつまでこんな関係を続けていけるのだろうとふと思う。
もし、契約が終わっても友達くらいにはなれたらいいな。なんて。

そろそろ日も暮れてきたし、帰ろうかと話になる。
少し名残惜しいけど、また学校で会えるしね。

「名前ちゃん!今日はありがとねぇ!楽しかったよ!」
「うん!私も楽しかった!」

善逸くんはいつも明るくて優しい。私には眩しく見える。だからこそ

君の優しさが苦しい



*PREV NEXT#

Bookmarknamechange


 

TOP