私と彼は契約で結ばれた関係だ。
私は彼氏が欲しい、彼は彼女がほしい。
そんなしょうもないことで契約が成立した。
今日は定期放課後デートの日だ。場所は校門前。
できるだけ目立つような場所を指定し、付き合っているアピールをするためだ。

「おまたせ!善逸くん!寂しかった?」
「名前ちゃん!全然大丈夫だよぉ、帰ろっかー」

するりと私は彼の腕を組んで歩く。
ここまですれば周りは私たちのことをカップルだと思うだろう。
私たちはしばらく歩き、人目のつかない公園へと向かう。
ここまで来ればさすがに大丈夫だろう。そっと腕に回した手を離した。

「ここまで来れば大丈夫かな・・・?」
「周りに人のいる音はしないから大丈夫だよ」

ふぅとため息をついてブランコに腰を下ろす。
私たちは定期的に一緒に帰ることにしている。
こんな関係になったのはもう3か月も前だ。

私は周りがどんどん恋人ができていくのに焦っていた。
みんな恋バナに花を咲かせている中、自分一人だけ彼氏がいない。
とうとう友達に名前は彼氏いないの?と聞かれてとっさにいると嘘をついてしまった。
そこからが大変だった。私が。

嘘を真に変えるために私は探した。そりゃ必死に
そこでふと噂を聞いたのだ。
女の子にめちゃくちゃ目がないという人を。
それが現在の偽彼氏である我妻善逸くんだ。

さっそく私は彼を呼び出し告白をした。好きという意味ではなく。
そりゃもう申し訳なくて土下座をしましたよ。
少しの間でいいので偽彼氏になってくださいというくだらない告白に対して
「俺も彼女いたことなかったからいいよ」って許してくれた。

そんな経緯があり今にいたるのである。
契約から始まった恋人関係だが、最近困っていることがある。

「はい!名前ちゃん。寒そうだから温かい飲み物買ってきたんだけど飲む?」
「・・・飲む。ありがとう善逸くん」

凍える手を温かい飲み物で暖をとる。
先に飲み物を飲んでいる彼をじっと見ていると、こちらに気付いたみたいで照れくさそうに笑う。

なんだこの可愛い生き物は!
心がキュンキュンしてしまうのである。
最初の頃はただいい人だなぁとしか思わなかった。
こんな契約を快く受けてくれる人なんてそういない。ただのありがたい存在のはずだった。

「・・・名前ちゃん?どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」

その私を呼ぶ声がとても心地がいい。
もっと呼んでほしいとすら思う。
こんなことなら最初から告白すればよかったと思うほどに。

「ごめんね。毎回こんなことに付き合わせて」
「え!大丈夫だよ!俺こういうの結構楽しいから!」

なんて心の広い人なんだろうか。笑顔が眩しい。
これだと自分ばかり得しているような気がする。
さすがに申し訳ないので、私は提案をすることにした。

「さすがに申し訳ないから、何か私にできることがあれば言って?」
「んー?そうだなぁ。じゃあ今度休みの日とか空いていたりする?」
「休みの日?土曜日なら空いてるよ!」

私の休みの日を聞いてどうするつもりなのだろうか。
何か買い出しの手伝いだろうか。私にできることならなんだってしたい。
しかし彼の提案は思いがけないものであった。

「じゃあ、3か月記念にどこか遊びに行かない?」
「えっ?えぇ!?」
「せっかく契約だとしてもここまで続いたし、もっと名前ちゃんのこと知りたいなぁ・・・ってだめかな?」
「いいえ!行かせていただきます!」

食いつくように返事をする。
彼もよかったって安心した顔をするから、私はまた胸がキュンとする。
契約中この思いを抑えることができるだろうか。

私は、この恋を止められない

誰か止め方を教えてほしい。



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