お昼も食べ終わって、じゃあまたねと解散をしようとした。
その時に炭治郎くんからこの後時間あるか?と聞かれた。
お昼休みもまだ時間あるし大丈夫だよと伝え、私たちは教室を出る。
善逸くんが二人で抜け駆け?とか言ってたけど、そういうやましいことじゃないと思う。

もはやいつもの場所になっている教室に向かう。
意外とあの教室は人が来ないので、内緒話とかにうってつけだ。
二人で密会しているみたいだなと少しドキドキとした。

「最近よくこの教室使っちゃうね」
「確かにそうだな」
「ふふ、今日はどうしたの?」
「あぁ、名前にバレンタインのお返しをしたくて・・・」

炭治郎くんのことだからお返しはくれるとは思っていたけど、まさか今渡すとは。
てっきり放課後パン屋に寄ったときにくれるのかなぁくらいの気持ちだった。
後はお昼に渡せただろうに渡さないのは何か理由があるのだろうか?

「みんなの前では渡せないような物なの?」
「いや、そういうわけではないんだが・・・」

どこか歯切れが悪いように感じる。
最近彼の様子がおかしいように感じるが気のせいなのだろうか?
考えすぎもよくないかなとしばらく黙る。
彼は意を決したように私に紙袋を渡す。

「この前はチョコありがとう。これ、気に入るかわからないんだけど・・・」
「炭治郎くんもありがとう!さっそく開けてみるね」

カサリと開けてみると、キラキラするものが目に入った。

「ん?これはブレスレット・・・?」
「うん、名前に似合うと思って」

まさかアクセサリー系のプレゼントを渡されると思っていなかったので驚いた。
しばらくジッと見つめていると、彼に声をかけられる。

「もしかして、そういうの好きじゃなかったか・・・?」
「いや!すごく嬉しいよ!でもちょっと意外だなって」

私は純粋に嬉しいことを告げる。
そうすると彼はホッとしたような顔になる。そしてスッと真面目な顔をした。
私はそれに気付かずに、ブレスレットを眺めていた。

「名前に話したいことがあるんだ」
「んー?どうしたの?」
「俺は、名前のこと好きだ」
「・・・・え?」

私は驚きのあまりバッと彼の顔を見る。
その顔はいたって真面目だ。私の頭はパニックになる。

「と、突然どうしたの?なにかあった?」
「最初はわからなかった。でも元旦のときに手を触れたとき、柔らかくて離したくないと思った。
バレンタインの時も、みんなと同じ物だったのが嫌だった。そして今日、いつもと違う名前に心奪われた」

突然のことに私は言葉が出ない。それでも彼は続ける

「その姿を独り占めしたいと思うのは、名前に恋をしたということでいいんだろうか・・・?」
「そ、それは、もし私が炭治郎くんのことギュッとしても嫌じゃない?」
「むしろ嬉しいと思う。それ以上だってしたい。・・・好きだ、名前」

ほろりと目から涙が流れるのを感じる。
これは夢だろうか。思わず自分の頬をつねる。

「ゆ、夢じゃない・・・?」
「うん、夢じゃないよ」
「私と付き合ってくれるということ・・・?」
「うん、そうだな」

私は思わず彼を抱きしめる。一瞬ビックリした顔をするけど、抱きしめ返してくれた。
ずっと片思いだったから、辛かった。でも今は何物にも代えがたいほど嬉しい。

「う、嬉しいよ。炭治郎くん」
「俺も嬉しいよ。伝え遅れたけど、今日の名前かわいい」
「ありがとぉ・・・っ」

善逸くんと伊之助くんに感謝だ。あの二人にはまたお礼を伝えなくては。
しばらく抱き合っていると、彼が私の顔を見つめる。

「今日の名前いい匂いするな」
「あ、それはね、リップのにお・・・ん・・」

私が答え終わる前に何か口に当たるのが感じた。

「名前の口は甘いな」
「た、た、たんじろうくん・・・!?」

彼が意地悪そうに笑う。そんな顔するなんてずるい。
結局私はどんな彼でも大好きなのだ。
彼に敵うことは一生無いのだろう。
だから私は負けないように彼に伝え続けるのだ。


「大好きだよ、炭治郎くん!」




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