3月
もうすぐ炭治郎くんと出会って1年になる。
4月に告白してるから、もう1年くらいは片思いなのか。
途中色々あったけれど、さすがに少しは関係が進展していると思いたい。
朝、登校すると声をかけられる。

「名前ちゃんー!今時間ある?」
「やっほー善逸くん、どうしたの?」
「イヒヒ、はい!この前のお返しだよー」

そういえば今日はホワイトデーかと思い出す。
私は彼から小さな紙袋をもらった。随分小さいものである。
こんなに小さいものって何が入っているんだろう?
カサ・・・と紙袋から取り出してみると

「これって、リップクリーム・・・?」
「そう!しかもただのリップクリームじゃないよ!色付きのやつだから、名前ちゃんに似合うと思って!ちなみに匂いつきだよー」
「わぁ!ありがとう。今まで安いリップしか使ったことないから嬉しいな」

さっそく蓋をあけてつけてみる。ふわっと桃の匂いがした。
善逸くんって少しうるさいけど、女子の喜ぶものよく知ってるなぁ

「どう・・・かな?」
「かわいいよぉ!名前ちゃんによく似合ってるよ!」
「ありがと!大切に使わせてもらうね」

まさかこんな素敵な物をもらえると思っていなかったので、私のテンションはあがる。
香りもそんなにきつくないし、大事に使って行こう。

機嫌よく廊下を歩いていたら、今度は前から伊之助くんが歩いてきた。
彼がこちらに気付くとずんずんと歩いてくる。どうしたんだ。

「ん、これやる」
「え?もらっていいの?というか、まさかのお返しとか・・・?」
「ばばあがもらっておいて返さないのはおかしいって言われたからな」

意外過ぎてびっくりした。
選んだのは親御さんらしいが、それでもくれると思ってなかったから驚きでいっぱいだ。
押し付けるように渡されたものをあけてみると、またもや意外なものだ。

「リ、リボン・・・?」
「本当はつやつやのどんぐりを渡そうとしたんだが、ばばあがこれにしろってうるせぇからな」
「伊之助くん、ありがとうね!さっそくつけるよ」
「・・・・好きにしろ!俺をほわほわさせんじゃねぇ!」

何か叫んでいるが、それを無視してリボンを髪の後ろにつけてみる。
いつも何もつけていないから、少し新鮮な感じだ。

「ど、どうかなぁ?」
「知るか!ぼけ!」

用はもう済んだから行くからな!と彼は行ってしまった。
彼らしい感想だが、これではいいのか悪いのかよくわからないな・・・
でも、自分の髪の色に似合っている気がするから、なくさないように使おう。


色のついたリップクリームに、髪にはリボン
教室に戻ったら友達から似合ってると褒めてくれたから嬉しかった。
私は彼にこの姿見せたら褒めてくれるかなぁと少し期待をする。
丁度お昼にみんなでご飯を食べるから、どんな反応をするかな?

お昼のチャイムがなると私はいつもの所に向かう。
炭治郎くんびっくりするかな?と少し浮ついた気持ちでいく。

「お待たせ!お昼食べよう!」
「やだ、名前ちゃん可愛くない!?俺のあげたリップもそうだけど、髪どうしたの?」
「ありがとー!髪は伊之助くんからもらったんだよ」
「あいつ、そんなセンスあったか・・・?おい、見ろ炭治郎。いつもより可愛くない?」
「・・・そうだな。可愛いと思うよ、名前」

思ったより反応が薄かった。
うーん、彼にはこの格好あんまり好みじゃなかったのだろうか。
そういえば彼の好みとか全く聞いたことなかったな。1年目にして大きな失態である。

「反応うっす!それでも男か炭治郎!」
「まぁまぁ落ち着いて善逸くん。とりあえずお昼食べよう?今日は何のパン持ってきてくれたの?」
「あぁ、今日はトマトベースで作ったカレーパンとクロワッサンだ」
「ねぇ、聞いてる?無視とかそんなことある?」

善逸くんが炭治郎くんの身体をゆさゆさと揺さぶる。
しかし、全くの無反応でご飯を食べていく。いつもなら行儀悪いとか注意しているのに。
どこか上の空な感じがして、少し心配になった。




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