1月
私たちは神社に来ている。
冬休みに全員で遊ぶことがなかったし、せっかくだからみんなで初詣に行こうという話になり現地で集合することになった。

「やっぱり元旦だから人がいっぱいだねー」
「人が多すぎて気持ちわりぃ」
「人がいるところで吐くなよ伊之助・・・」

お賽銭の所で並んでいるけど、中々列が進まない。
まだしばらくかかりそうだなぁと考えていると

「名前は大丈夫か?厳しそうなら言ってくれ」
「私は大丈夫だよ、炭治郎くん。私よりも伊之助くんが厳しいんじゃないかなぁ」

私があげたマフラーをつけている彼は私のことを心配そうに見てる。
律儀に使っているのが彼らしい。
伊之助くん大丈夫かなーって二人で気にかけていると、そちらをじっと見ている人がいた。

「なにあれ?炭治郎と名前ちゃん、めちゃいい雰囲気じゃない?ていうかいつの間に名前で呼んでんの?これで付き合ってないとかマジ?」

善逸くんが何かぶつぶつ呟いているが、周りに人が多くて聞き取れなかった。

「あ、そろそろ順番がきそうだよ!みんな何お願いするか決まった?」
「天ぷらを大量に食いてぇ」
「お願い事を言うと叶わなくなっちゃうから言っちゃだめだ、伊之助」

伊之助くんがショックを受けたように衝撃を受けている。
なんというか、ここまで純粋な子っていない気がする。

「だ、大丈夫だよ。天ぷらに関しては親御さんに頼んで作ってもらおう?」
「そうだな!一生食えねぇわけじゃねぇから大丈夫だな!」

さっそく今日は天ぷらを食うぜ!と騒いでいる。切り替えが早すぎる。
やっとお賽銭の前についたので、私たちはお賽銭をなげる。

(今年こそ、彼と進展がありますように)

お祈りが終わった後、顔をあげると3人はまだ祈っているようだった。
炭治郎くんはともかく、善逸くんも伊之助くんも黙っていれば美形なのにね・・・

お祈りが終わると伊之助くんが腹減ったとうるさいので、屋台で食べ物を食べることにした。
元旦ということもあり、色々な屋台があるので目移りしてしまう。

「ちょっとしたお祭りだよねぇ。どれ食べるか迷っちゃうね」
「俺もこんなにあると思わなかったなぁ」
「天ぷらはどこにあんだ?」
「唐揚げはあるけど、天ぷらは売ってる所見たことないんだけど・・・?」

3人といるからか、わちゃわちゃして楽しいな。
そんなに友達の多いほうではなかったから、少し新鮮だ。
私も何か食べたいなぁと周りと見ていたら、唐揚げ屋さんを見つけた。
さっき善逸くんが唐揚げって言っていたから私も食べたくなってしまった。
私は3人にここに唐揚げ屋さんがあるということを伝えようとしたが

「・・・・あれ?3人は・・・?」

私はいつの間にか3人とはぐれてしまったようだ。


「困ったなぁ・・・」
私はポツリと呟く
お約束といえばお約束だが、まさか3人ともはぐれてしまうとは。
せめて炭治郎くんと2人ではぐれるとかだったらいいのになぁ
とりあえず3人に連絡をいれておこう。今は携帯という便利な物もあるしね。
すぐに返事がきたようで、戻るからそこから動くなということだった。
私も了解と返事を返し、待ってるのも暇だしせっかくだから唐揚げ買おうかな。

もぐもぐと唐揚げを食べていると後ろから誰かに話かけられる。

「――っ名前!やっと見つけた・・・」
「あれ?炭治郎くん?他のみんなは?」
「3人で向かって、また誰かとはぐれたら困るだろ?だから2人には別の場所で待っててもらっているんだ」
「確かにそうだよね・・・ごめんね?迎えに来てもらっちゃって」

呑気に唐揚げを食べていた私は恥ずかしくなった。
しかも彼は走ってきてくれたようで、ほのかに息が上がっている。

「いや、いいんだ。むしろ気づかなくてごめんな・・・?」
「と、とんでもございません・・・!」

息が上がった声で言われると、なぜかドキッとした。なんか色っぽい。
私はなんてことを考えているんだと頭をふるふると振っていると、はいって彼に手を出された。

「ん?手なんか出してどうしたの?」
「人も多いから、はぐれないように手を繋いだほうがいいと思って」

いやいやいや、なんてことを言うんだ彼は。
あくまで君に好意を持っている人間だぞ?心臓が爆発しちゃうよ?これ
わかっているのかなぁとじっと見ていると、彼はハッとした顔になった。

「ご、ごめん!女性にこんなことするのはよくないよな」
「ふーん?ちょっとは気にかけてくれたのかな?しかしもう遅いよ」

えいって私は彼の手を握った。いつまでも翻弄されていると思うなよ。
これで少しは私のことを意識するがいいと、ほんの出来心だった。
ふふんと彼の顔を見てみると・・・顔が真っ赤になっていた。

「た、炭治郎くん・・・?え?顔があか・・・」
「みっ見ないでくれ!さぁ善逸達の所に戻ろう!」

そのまま彼はぐいぐいと私を引っ張っていく。
後ろ姿しか見えなくなってしまったが、耳が赤いのがわかる。
私は予想外な彼の表情に自分も赤くなるのがわかった。


「恥ずかしがってる所も好きだよ、炭治郎くん!」




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