「あぁぁぁ名前ちゃん!また振られちゃったよぉぉぉ」
「はいはい、これで何度目?」

私は何度目かわからない慰めをしている。
べそべそ泣いている友人を慰める私のことも考えてほしい
ここ、人通り多いんだけどなぁ
私の友人、我妻善逸は付き合った人に何度も騙されているのに懲りないやつである。

「とりあえずここで泣かれると周りの目がまずいから、場所を移そう?」
「・・・うん」

彼の手を引いて歩くと大人しくついてくる。
どこかゆっくり話ができる所がないかなぁと探していると
丁度人の少なそうなカフェを見つけたのでそこに入る。
私たちは適当に飲み物を注文して彼の話を聞く。

「で?今回はなんで振られちゃったの?」
「聞いてよ!あの子がブランドのネックレスがほしいって言ったから、バイトたくさんして送ったのに、次の日好きな人いるからって振られたんだよぉぉぉ」
「それって貢がされただけでは・・・?」
「でもあの子も俺のこと好きって言ったのに・・・」

全く、つくづく見る目のない人だと思う。
便利な耳を持っているくせに、自分の信じたい人を信じるって本当に馬鹿なのか?
その便利な耳で、私があんたのことどう思っているのか聞いてみてほしい。

「名前ちゃん、なんか怒ってる?」
「あら、察しがよろしいようで」
「ご・・・ごめんよう」

なんで怒っているかまではわかっていないようだ。
この気持ちを理解されてしまったら、私は彼のそばにいれないだろう。
知ってほしいようで、知られてほしくない、この気持ち。

「っはぁー。いいよ。今日は私がおごってあげるから善逸は元気だして」
「ほんと!?さすが名前ちゃん!頼りになるなぁ」
「はいはい。今度は騙されないようにね」

泣いたり笑ったり忙しいやつである。
そんな彼を放っておけない私も大概だ。
しばらく注文した飲み物を飲んでいると、彼がふとしたように話す。

「あれ?そういえば名前ちゃんは、気になる人とかいないの?」
「っ!?げほっげほっ」
「だ、大丈夫!?名前ちゃんどうしたの!?」
「い、いきなり善逸が聞いてくるから・・・」

あまりの突然な疑問に飲み物が変な所に入ってしまった。
今までそういう話を振られてこなかったので、びっくりしてしまった。

「どういう人が好みとかあるの?」
「うーん、そうだなぁ。素直な人かな」

君みたいなね。とは言わずにふんわりとした感じで伝える。
突然なぜそういうことを聞くのだろう。少し疑問に感じた。

「素直な人かぁ。名前ちゃんならすぐ見つけられるよ!」
「・・・そうだね」
「?どうして悲しそうな音を出すの?」

どうしてってそんなことを言われたら悲しくもあるだろう。
まるで自分は候補に入っていないみたいじゃないか。
なぜか悔しい気持ちになる。もう、いいや

「それはね、私は善逸のことが好きだからだよ」
「・・・えっ?」
「じゃあ、今日は帰るね。お金払っておくからゆっくり飲んでて」

私はスッと席を立って店をでる。
あーあ。言ってしまったなぁ。
タイミング的には最悪だと思う。振られてすぐ告白なんてものをしてしまったのだから。
次からどんな顔をして会えばいいかなぁと考えてしまう。
根はいい奴だから、きっと振るときも優しく振ってくれるだろう。
振られる準備も出来たし、私は友人のまま穏やかに過ごせることを願おう。


「えっ?名前ちゃんが俺を・・・?嘘過ぎない?ちょっ、待って名前ちゃん!」

突然の告白に彼が驚きのあまりしばらく固まったあと、急いで店を出て彼女を追いかけるまであと少し。
そのあとの二人がどんな関係になるのかは
後日学校で手を繋いで歩いている所を目撃されているので、一目瞭然だろう。




*PREV END#

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