※私はだーれだ?の続き

頭の中の霧が晴れたようだった。
ずっと何かを忘れているような感覚があったが、思い出した。
私の名前は苗字名前だ。
なぜ忘れていたんだろう。いや忘れるのも無理はない。
私は鬼になっていたのだ。鬼になった者は人間だった時の記憶がない場合が多い。
しかし思い出したということは、私は人間に・・・?

「目が覚めましたか?」
「・・・珠世さん?」
「気分はいかがでしょうか」

そうだ。私は珠世さんの所に行って、注射を打ってもらったんだ。
禰豆子の血を採血し、それを研究したものを試験的に私で試してもらった。
結果、実験は成功したのだ。

「あ・・・私は鬼になっていたんですね」
「もしかして名前さん記憶が・・・?」

私は力なく笑う。鬼になったとはいえ、人間を食べなくて本当によかった。
もし食べてしまっていたら・・・。考えるだけでぶるりと身体が震えた。

「すべては珠世さんのおかげです。ありがとうございます」
「いいえ、お礼は禰豆子さんに言ってください。あの子は特別なのです」
「そういえば炭治郎たちは・・・?」

キョロキョロと周りを見渡す。私は彼らと行動をしていたはずだ。
優しい彼のことだから、私を置いてどこかに行くとはないと思うのだが・・・

「名前さんは1週間ほど眠っていました。その間に任務が入ってしまったので、うちで預かることになったのです」
「1週間も寝ていたんですか・・・。ご迷惑をお掛けしました」
「いいえ、気にしないでください。そろそろ彼も帰ってくる頃でしょう」

珠世さんと一度ならず二度も助けてくれた。本当に命の恩人だ。
彼女の言う通り、しばらくするとパタパタと足音が聞こえる。

「ただいま戻りました!名前の様子はどうですか?」
「おかえりなさい、炭治郎さん。丁度彼女は目が覚めた所ですよ」

彼は目線を私に向けると嬉しそうにかけよる。
まだ鬼だと思っているであろう私に頭を授けるのだ。
だから私はいつものように頭を撫でてあげるのだ。

「ただいま、名前!今回は置いて行ってしまってごめんな」
「いいよ、ずっと守ってくれてありがとう。炭治郎」
「・・・え?」

驚いた顔でこちらを見る。
そして信じられないという顔で、すぐに泣きそうな顔をする。
百面相をしている彼に私は笑う。

「私も、ただいま」
「・・・うん、おかえり、名前」

私たちは抱き合った。そしてまた私は彼の頭を撫でる。
彼も私の存在を確かめるかのように強く抱きしめる。

「よく頑張りました。私の方がお姉さんなのに、頼ってしまってごめんね」
「いいんだ・・・っ!俺はまた名前とこうしていれられることが幸せだ」
「ありがとう。今度は私が助ける番だね。禰豆子ちゃんを人間に戻すの頑張ろうね」

私たちは自然とお互いに口付けをしていた。

また任務が入ってしまったので、私たちは珠世さんの家を出る。
久々に着た隊服はしっくりときた。刀もずっと保管してくれていたようで腰に納める。
また鬼と戦うのは少し怖い気もしたが、私はそれ以上に守りたいものがある。

「名前、本当に大丈夫なのか?無理して復帰しなくてもいいだぞ?」
「大丈夫だよ。私はお姉さんだからね!また昔みたいに頼ってくれてもいいんだよ?」
「もうお姉さんじゃないだろう?記憶が戻ってるならわかっているよな?」

そうだね、と私は答えて彼の手を握る。
そうすると彼は嬉しそうに握り返してくれる。
鬼の時は幾度なく繋いでいたが、今度は人間の私として繋ぐのだ。

「大好きだよ、炭治郎」

かつて鬼になったばかりの私が言った言葉を思い出す。
彼を思う気持ちは鬼になっても変わらなかったということなのかな。
ちらりと彼を見ると、あの時は違い笑顔で私に応えるのだ。


「俺もずっと名前のことが好きだ!」


今度はお互い同じ気持ちで伝え合うのだ。





*PREV END#

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