8月
夏休みに入り、一日も竈門くんに会えないのは嫌なのでほぼ毎日パン屋さんに通っている。
たまに善逸くんや、パン屋さんで口いっぱいにパンを頬張っている嘴平くんがいる。
会計前に食べていいんだろうか・・・と若干引いてしまうが
「グァハハハ!俺と権八郎との仲だからいいんだ!」って言ってた。
竈門くんはニコニコしてるけど、心広すぎない?

「かーまーどーくん!今日も来たよ!」
「あ!名前さんじゃないか!ほぼ毎日来てるけど、お金は大丈夫なのか・・・?」
「全然大丈夫だよ!ノートのお礼も兼ねて買ってるんだから、気にしないでね」

本当はちょっと金欠ではある。
竈門くんのパン屋さんは人気店であるだけに、すごくおいしい。
だからついつい買いすぎちゃうんだよね。
どうしようかなぁと考えながら歩いていると、目の前にド派手な人がいる。

「あ、宇髄先生―、こんにちは」
「おおー苗字か!夏休みは派手に楽しんでいるか?」
「毎日充実はしてますね!でも、最近金欠で・・・」

何か短期でいいアルバイトないですかねーって何気なしに相談してみると
先生は少し悩んだあと、私に提案をしてきた。

「名前、絵のモデルしてみないか?もちろん謝礼は出すぜ」
「え?先生なのにお金出してもいいんですか?」
「あー?いーんだよ。俺様のためにド派手に働きな!」

学校側も一応許可?はもらっているらしい。ここの学校って大分自由だよね。
じゃあお言葉に甘えて宇髄先生の所でお世話になろうかな。

「じゃあ、明日から美術室でよろしく頼むわ」
「はーい。よろしくお願いします!」


次の日美術室に行くと一部壁が壊れていた。噂で爆発させていたとは聞いてたけど、本当だったんだ。

「おはようございます、先生。私は何をすればいいですか?」
「よー苗字、昨日説明した通りだが、絵のモデルになってほしいから座っとけ」
「座っているだけでいいんですか?」

座っているだけでお金をいただいてしまうのは少し忍びない。
自分用に持ってきたお昼のパン、先生にあげようかな

「宇髄先生―、よかったらパン食べますか?」
「マジで?さんきゅ。これって竈門んちのパンだろ?」
「そうなんです!おいしいですよねぇ」

もぐもぐと食べていると、竈門くんの顔を思い出す。
彼のことを考えていると幸せな気持ちになる。早くお店に行きたいな。

「苗字は本当に竈門のことしか見えてないのな」
「あっ、わかりますか?いやぁお恥ずかしい限りです」
「まぁ入学式からあんな大勢の前で告白してるしなー」

そういえば、先生も居たんだっけ。改めて考えると周りに人がいるのによくやったもんだ。

「へへ、毎日告白はしてるんですけどね。中々振り向いてくれないみたいです。どうすればいいと思いますか?」
「はー?そんなの簡単よ。押してダメなら引いてみろってね」
「そんなことして成功するのは少女漫画の世界だけですよ」

それに、私が耐えられない。もし、そんなことしてしまったら。
そのまま竈門くんとの関係が終わってしまいそうで。

「まぁ、その作戦は最終奥義として考えておきますね!」
「おーおー、青春してんな。そういうのは派手に好きだぜ」

じゃあ、今日はこのくらいにしておくかと宇髄先生に言われたので私は美術室を後にした。
そして私はもはや日課になっているパン屋さんに寄っていく。

「竈門くん!こんにちは!」
「あ、いいところに来た苗字さん!新作のパンができたんだが、食べていかないか?」
「本当?それならお言葉に甘えて食べていこうかな?」

通いつめているだけあって、たまに新作のパンを食べさせてくれる。
苗字さんは常連さんだから特別に!って竈門くんが言ってた。特別っていう言葉が嬉しい。

「このパンおいしいね!甘すぎなくていっぱい食べられそうだよ」
「そうか!感想ありがとう。これは苗字さんをイメージして作ってみたんだ」

甘すぎるより、それくらいのほうが好きそうだと思って!と言われて、私は顔が赤くなる。
ほんの少しでも私のことを考えてくれるなんて喜ばしいことなんだろうか。



だから私は彼に素直に伝えるのだ。



「思いやりがある所が好きだよ、竈門くん!」





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