7月
そろそろ夏が始まり、日差しが暑くなってきた。
そういえば今日は体育で水泳があるんだったなぁと思い出した。

授業とはいえ、暑い中冷たい水の中に入れるのは嬉しい。
きっとこんな暑い日には最高なんだろうなと思う。

そして何より竈門くんの水着姿が見れるということでは・・・!?
考えるだけで鼻血が出てしまいそうだ。
念のために双眼鏡持ってきておいてよかった。男女で泳ぐ場所違うからね。
楽しみだなぁ体育の授業。


「・・・苗字、授業に関係ないものは持ってくるな」
「すみません!私には関係あるんです!」

そう私に注意するのは無表情の冨岡先生だ。
竹刀を私に向けているが、それどころではない。

「今日ほど生まれてきてよかったと思った日がないです、先生・・・」

竈門くんの水着姿が最高すぎて・・・
あの出来上がった肉体美はなんだろう。芸術なんだろうか。
ほぅ・・・とうっとりしていると先生がドン引きしているのがわかる。

「今すぐその双眼鏡をしまわないと、いくら女子でも手加減しない」
「先生がぼっちだからってそんなに私に構わないでください」

心外だ!と先生が少し表情を変える。
俺はぼっちではないと言っているが、そこに関しては黙っていよう。

続けて竈門くんの肉体美を堪能しようと双眼鏡を使おうとしたら
後ろからすぱーん!と何か頭に当たった気がした。
あ、マジで冨岡先生容赦しなかったなと思い、私の視界は暗転した。


「うーん・・・、頭が痛い・・・」

私が目を覚ますとそこは保健室のようだ。
冨岡先生め、伊達にPTAで問題になってないな。本当に容赦なかった。
今、何限目だろうと時間を確認しようとしたら、ガラッと誰かが入ってきたようだ。

「苗字さん!授業中に倒れたみたいだけど大丈夫か!?」
「かかかか、竈門くん!?」

なんと彼が保健室に来てくれるとは。今日はついている。

「大丈夫だよ。ちょっと冨岡先生に怒られちゃった」
「だからといって女性に手をあげるなんてダメだと思うんだが・・・」

女性というか、生徒に手をあげるのはよくないんじゃないかな?
でも、そのおかげで彼と話せるんだから冨岡先生には感謝だ。
しかし今の竈門くんは制服姿だ。ということは・・・

「もう体育の授業が終わっちゃった感じ・・・!?」
「あぁ、むしろもう放課後だな!」
「えぇぇ!結構寝ちゃったなぁ」

確か体育はお昼食べた後にあったから、午後の授業はほぼ全部出れなかったのか。
好きな歴史の授業もあったから残念だなぁ・・・と肩を落とす。

「もしよければなんだが、授業用のノートとっておいたから渡しておくよ」
「えぇ!本当に?それは本当に助かるなぁ」

彼からノートを借りてパラパラとみる。男の子が書いたノートにしては丁寧に書いてあるなぁ。
竈門くんは字も綺麗なんだなってノートをギュッと抱きしめる。

「ありがとう。竈門くん」
「困ったときはお互い様だからな!」

彼は本当に優しい人なんだなぁ。
彼に愛された人は幸せなんだろうなって考えると少し心がキュッとなる。
私がそんな存在になれたらいいのに。ほんの少し寂しい気持ちになる。

「もうそろそろ、夏休みかぁ、竈門くんに会えないなんて寂しいな。」
「どうしてだ?夏休みも一緒に遊べばいいじゃないか!」

善逸とか伊之助も誘ってみんなで遊ぼう!って言ってくれる。
それも嬉しいけど、本音を言うなら二人きりがいいなぁ、なんて。
だから私は少しでも彼に意識してもらうために伝えるのだ。



「そんな優しい所も好きだよ、竈門くん!」





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