※主人公鬼化しています。


ふわふわ。頭がふわふわとする。
私は今まで何をしていたんだっけ?お腹が空いた。
あの人のお腹おいしそうだな。いや、だめだよ。人間なんて食べちゃいけないよ。
そうだ、眠ろう。眠れば空腹を忘れられるような気がした。

「・・・気が付きましたか?」
「・・・ここはどこですか?」

パチッと目が覚めると知らない場所に横になっていた。
私に声をかけてきた女性は誰なんだろうか。

「あなたは、だれですか?」
「私は珠世と申します。隣にいるのは愈史郎。倒れている所をここへと連れてきたのです。」

彼女は突然連れてきてしまい、申し訳ないと言っているがそれよりも気になることがあった。

「あれ、おなかがすいてない・・・」
「やはり貴方は鬼だったんですね。ひどい飢餓状態なのでまだ実験段階ですが注射をさせていただきました。」

鬼?実験?なんのことだろう。
だけど、私はもう人間ではないということはなんとなく理解した。

「たすけてくれて、ありがとうございます・・・」
「どういたしまして。貴方が人間を食べなかったから助けたようなものです。注射を打つことによって少量の血で大丈夫になりました。」

至れり尽くせりな治療のおかげで私は、命拾いをしたということだ。
でも、困ったことに鬼になる前の記憶がないからこれからどうしようかなと悩んでいると

「珠世さん!名前は大丈夫なんですか!?」
「炭治郎さん、先ほど治療が終わった所です。残念ですが貴方の妹さんとは違い、少量の血が必要になってしまいますが・・・」

突然入ってきた少年は誰だろうか。
ひどく心配そうな顔をしてこちらを見ている。

「はじめまして。わたしのなまえをしっているんですか?」
「・・・っ!もしかして記憶がないのか・・・?」

そんな悲しそうな顔をしないでほしい。頭をぽんぽんとなでると少し表情が和らいだ気がした。

「いきなり驚かしてしまってすまない、俺は竈門炭治郎。君は苗字名前というんだ。」
「たんじろう・・・」

ひどく懐かしい響きのような気がするが、思い出せない。
うーん、と唸っていると珠世さんが話かけてきた。

「名前さんはこれからどうしますか?もし行く当てがなければこちらでお預かりしますが・・・」
「だめだ。俺が連れていく!」
「しかし、貴方はもう禰豆子さんを連れていらっしゃいますし・・・」
「いやだ!一人でも二人でも変わらないです!」

必死に連れて行こうとする炭治郎。珠世さんが困ってる。
私はどうしたいんだろう。でもなんとなくだけど、彼についていきたい。

「わたしは、たんじろうについていきたい」
「ほ、本当か!?ありがとう、絶対に名前のこと守るからな」


一緒に行動し始めてわかってきたことがある。
炭治郎は、とても優しい人だ。いいことはいいって言うし、だめなものはだめっていう。
そして、よく私に撫でてほしそうに頭を差し出す。
その度にぽんぽんと頭を撫でてあげる。そうすると喜ぶから。

「ありがとな名前!俺は長男だからあまりそういうことしてもらったことないんだ」
「どういたしまして。わたしはおねえさんだからね」

炭治郎から聞くには私は彼より2つ上らしい。
彼は周りに頼られてばかりだから、私が彼に頼ってもらえる存在になろう。

「はやく、おもいだしたいな」
「あぁ、人間に戻れるように頑張ろうな」

ぎゅっと彼は私と手をつないで歩く。
彼と一緒にいるこの時間がひどく愛おしく感じる。
ずっとこんな時間が続けばいいのにな。

「だいすきだよ、たんじろう」

ふと思ったことを言葉にすると、ひどく彼はびっくりしていた。
何か言いたそうな顔をしているが、きゅっと一瞬口を閉じて、また開く。

「俺も名前のことずっと好きだよ。」



それはどういう意味での好きなんだろうね?


早く、記憶が戻りますように。





*PREV END#

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