5月
苗字名前の朝は早い
朝3時には起床し、身支度を整える。
普通なら皆寝ている時間だろうが、私には大事な用事があるのだ。

「よし、じゃあいってきます!」

私は、そっと家を出るのであった。

私の足は真っすぐと、ある場所へと向かう
それは、パン屋さんだ。
私の一日は彼を見ることから始まる。

外からは、ぱん、ぱぁん!と音が鳴るのが聞こえる。
彼は今日もパンを作っているんだな。とニコニコしてしまう。

暗い中、パン屋さんの窓からは明かりが見える。
そこで竈門くんが一生懸命パンを作っているのだろう。
私は、そんな彼を見て胸がいっぱいになる。

「はぁぁぁ。今日も竈門くんはカッコイイな。
何のパンを作っているのかな?もはや私がパンの生地になってこねられたい。」

そんなことを考えてしまうくらいに、彼に心酔している。
何時間でも見ていられるなと考えていると。

「ん?誰かに見られているような・・・」

彼からそんなつぶやきが聞こえ、ふと窓を見ると

「へへへ、かっこいいなぁ、竈門くん」

よだれを垂らしている名前が、そこにいた。

「わっ!苗字さん!?こんな朝早くにどうしたんだ!?」
「あっ見つかっちゃった。おはよう竈門くん。」

いけない、いけない。見つからないように気をつけていたのにな。
うっかり見とれていたら竈門くんに気づかれてしまった。

「女性が暗い中来るなんて危ないじゃないか!ほら、中に入って。」
「そんな、お仕事の邪魔になっちゃうし、大丈夫だよ」

別に私は、仕事の邪魔をしてまでかまってもらおうとは思ってないので帰ろうとする。

「いや、だめだ。危ないから入るんだ!」
「大丈夫だよー」

そんなやり取りを何度かするが、中々折れてくれず、私が折れることになった。
そういう真面目な所も素敵だよ。竈門くん。

「じゃあお言葉に甘えて・・・」

お仕事の邪魔して申し訳ないなぁと思いつつ、中に入る。
中に入るとふわっとパンのいい匂いがした。
彼がちょっと座って待っててくれ!というから大人しく座っている。

「待たせてすまない!苗字さん」
「いやいや、私が勝手に来たようなものだから。逆に申し訳ない」

一段落したであろう彼が、お茶を持ってきてどうぞと渡してくれた。
ありがたく受け取り一口飲むとホッと一息をついた。

「苗字さんは何でこんな時間にうちに来ていたんだ?」
「うーん、竈門くんに会いに?」

そう彼に伝えると少し困ったような顔をした。
そうだよね・・・さすがに引くよね・・・って私は少し落ち込む。

「そうか・・・そんなにうちのパンを・・・」

ん?何か彼は勘違いをしていらっしゃる?
私が訂正しようと口を開くが、その前に彼のほうが早かった。

「そうだ!これからは俺がパンを持っていくから、そんなに早く来なくて大丈夫だ!」

お昼に渡せばいいか?と問われるが、違うよ、竈門くん。
いやお昼にパンもいただきたいけど、彼は天然なのかな?
そんな彼に私はまた伝えてしまうのだ。



「そんな天然な所も好きだよ、竈門くん!」




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