「名前ちゃーん!名前ちゃん!」

あんなに大きな声を出さなくても聞こえてるよ。
そう呼んでくる人は彼しかいない

「そんなに何回も呼ばなくても聞こえてますよ?善逸くん」
「だぁってぇ!早く名前ちゃんに会うために任務終わらせてきたんだよ?」

褒めて褒めて!って言わんばかりに近づいてくるから
私は仕方ないなぁと彼の頭をなでた

「お疲れ様。任務大変だったでしょう?」
「死ぬかと思ったけど、名前ちゃんのことを考えたら頑張ることができたよ!」
「そんな雑念持ちながら仕事してたの・・・?」

若干引きつつも彼のことはなぜか憎めない。
彼と話すようになったのは蝶屋敷で出会ってからだ
私は蝶屋敷に務めているため遅かれ早かれ彼とは会うことになっていただろう。

「今日は特に大きなケガをされていないようですが、どうしたのですか?」
「さっきも言ったけど名前ちゃんに会いに来たんだって!」
「えっ、本当にそれだけですか・・・?」

そうじっと彼を見つめているともじもじとし始めた

「あっあのね名前ちゃん、君に渡したい物があるんだ・・・」
「まぁ、贈り物ですか?」

彼と仲良くなってきたとはいえ、贈り物をいただくなんて少し申し訳ない気持ちになる。
だって私は何も返せるものがないのだから。

「名前ちゃん、何か気にしてる・・・?大丈夫だよ!俺が好きで贈りたいんだ。」
「そう・・・ですか・・・?」

はいって彼から箱を渡された。
それならばありがたく受け取ることにしよう。

「今、開けてみてもいいですか?」
「もちろんだよ!名前ちゃんのために買ってきたんだから。」

少しわくわくしながら箱を開けてみるとそれは
「お菓子・・・?」
「そうだよ!チョコレートってやつなんだ!一度食べてみたんだけど甘くておいしかったから、名前ちゃんにも食べてほしいなぁ・・・なんて」
「まあ・・・嬉しいです。」

箱の中身は巷では人気と言われている西洋のお菓子であった。
お団子やあんみつとはまた違った甘さらしい。
私は自分だけ食べるのはもったないと思い、彼にもあげようと箱を差し出した。

「はい、よかったら善逸くんも召し上がってください。」
「えぇっ!?いいの?実は俺も食べてみたかったんだぁ」

そう彼は嬉しそうにすると、私のほうをじっと見つめる。
その顔はなんだろうと思いつつ、もう一度彼に箱を差し出す。

「遠慮せずに、どうぞ?」
「うーん・・・俺、今回任務がんばったから名前ちゃんに食べさせてほしいなぁ、なんて」
「そんなことでいいんですか?」

兄弟がいる自分にとっては、食べさせることはなんてことない。
彼も甘えたい歳なのかなと思い、手にチョコレートをつまんで、どうぞと口に持っていった。

「え、冗談のつもりだったのに嘘過ぎない・・・?これはご褒美だ・・・!」
「ふふ、よく弟たちに食べさせてって言われたのを思い出しますね。」

懐かしいなぁと思い彼を見ていると、じゃあいただきますと言って私の手からチョコレートを食べた。
可愛いなぁと思ったのは最初だけで、中々彼の口が指先から離さない。

「あ、あの善逸くん・・・?そろそろ離れてほしいなぁ・・・なんて」
「んー?もうちょっとだけ」

私の指はもうチョコレートなんてないはずだ。彼の舌が私の指を舐めている。
それがどうしようもなく恥ずかしくて、目をそらしてしまう。

「も、もういいでしょ?善逸くん!」

たまらず無理矢理離そうとして、ドンっと彼の胸を押す。
ドキドキが止まらない。そんなはしたないことをするような子だったろうか。
思わずにらみつけると彼はペロリと舌を出してふっと笑う

「これでも、弟みたいだと思う?」
「そ、そんな・・・!」

知らない。知らない。彼にそんな一面があるなんて。

「名前ちゃん、ちょっとはドキドキした?」
「・・・どうでしょうね」

この胸の高鳴りはなんなんだろう。

次からどんな顔をして会えばいいのか、しばらく悩むことになりそうだ。




*PREV END#

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