ハッと目が覚める。
これは夢?夢にしては内容が生々しい。
私は鬼と戦っていたというの?

「色々と考え過ぎて変な夢を見てたんだ・・・。ちょっとお水飲もう」

私はそう呟くと、何気なしにぐるっと部屋を見渡した。
そこには気にも留めていなかったものがそこにあった。

あの時、私の手に握らせた黄色の羽織の端切れ・・・
それを見た瞬間、私はすべてを思い出した。

そこから冒頭に戻るのであった。

思い出さなければ、私は過去に囚われることはなかったのに。
それは彼に対してもそうだ。きっとあの感じだと覚えているんだ。
約束という言葉で彼を縛り付けてしまっていた。

私は、そんな罪悪感と共に、嬉しさもあった。
昔果たせなかった約束を、今回は守ることができる。
そして最後に伝えることのできなかったことを、ようやく伝えることができる。
どうしようもなく、私は彼に惹かれていたのだ。
鬼のいる世界で唯一、彼といる時間は穏やかだった。
何気ないやりとりも、すべてが私にとってかけがえのない時間だった。

そう考えると、私は彼に会わなければと思い、家を出た。
私は彼の家の前につくと、チャイムを鳴らした。
玄関から出てきたのは一番会いたいと思っていた彼だった。

「はーい。って名前ちゃん!?どうしたの?ってさっき俺情けない姿見せたのに、なんで来るのおお」

彼は恥ずかしそうにしながら私を見てくる。
そんな彼を懐かしい気持ちで見つつ、口を開いた。

「明日、放課後空いてる?甘味処に行こ?」
「名前ちゃんのお願いなら、なんでも聞くよ・・・って甘味処・・・?」

ハッとしたような顔で私を見てくる。
そんな情けない顔しないでよ、善逸。

「約束、遅くなっちゃってごめんね?お待たせ」

私がふふっと笑うと、善逸は私を抱きしめた。

「名前ちゃん!名前ちゃん!思い出したの・・・?俺、ずっと後悔してた!
任務で二手に分かれないで一緒についていけばよかったって!守れなくてごめんって・・・!」
「もう終わった事だから、いいんだよ。私こそ、約束守れなくてごめんね?」

お互いに抱きしめあって、涙を流す。
相変わらず善逸は泣き虫だけど、彼の流す涙はとても綺麗だった。

「もう、平和な世界に生まれてきたんだから、いっぱい甘いもの食べられるね」
「うん、うん、いっぱいおいしい所見つけたから・・・!」
「これから、たくさん色々な所に行こうね」

身体を離して私は彼の顔を見ながら伝える。

「私、善逸のことが好きだよ」

そう伝えると、彼はポカンとした後また抱きしめてきた。

「く、苦しいよ、善逸・・・」
「俺、言ったよね?名前ちゃんのこと幼馴染なんて思ってないって」
ぎゅうぎゅうに抱きしめながら善逸は私に伝える。

「俺も昔からずっと好きだったよ」


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