君の一番柔らかい所に



鼻歌を歌いながら校舎の角を曲がると、俺は見慣れた姿を見つけた。千歳だ。部室の前でうつ向いたままたたずんでいる。
「千歳どないしたんや、そないなところで?」
声をかけても無反応。俺は首をかしげて千歳に近寄ると顔を覗き込んだ。
「ち、千歳?」
千歳はぽろぽろと涙を溢していて驚いて声が裏返ってしまった。瞬時にあの痴女が自分のベスト角度で微笑んでるウザい姿が目に浮かんだ。
「白石やな!白石におっぱい掴まれたんか?」
千歳は唇をきゅっと結んでかぶり振る。
「誰にもおっぱい…掴まれてなか」
「おん。そか。良かったわ」
俺は安堵のため息を吐いた。じゃあどうしたのかと訪ねようと思ったが、まだぽろぽろと涙を溢す千歳をそのままにするのは忍びない。ハンカチを探すとケツポケットからくしゃくしゃやつしか出てこなかった。今日に限って。これは今日に限ってや。格好がつかないが、仕方なくまだ使っていないスポーツタオルを出して、千歳の目尻にあてた。
「とりあえず、泣きやみ?な?」
「ん、ありがと」
濡れている睫毛が弧を描いた。泣いてる千歳には申し訳ないがキラキラした睫毛が綺麗で、それだけで役得だった。
「あんね謙也くん」
「どないした?」
「一緒に部室入って欲しか…一人じゃ怖くて入れんばい」
千歳の手が伸びてきて、ぎゅっと俺の手を握ってきた。身長は俺よりもでかいけど、手は小さくて、細くて、柔らかくて、壊れてしまいそうですごくドキドキした。

この手はおっぱいよりも柔らかいのかもしれない。

そう思ったら顔が熱くなった。まずい。誤魔化すように咳払いをし、千歳の手を優しく引いて部室の扉を開ける。
「もうおんね?」
指先から千歳の緊張が伝わってきた。時々きゅっと力を込めてくる。
「なにがや?」
「…」
「ん?聞こえへんて」
「く…きゃあぁ!」
千歳の叫び声。
そして次の瞬間、俺は深い深い海に溺れた。ブラックアウト。







次に気がついたら部室のベンチの上だった。
確か千歳が悲鳴をあげて、俺に抱きついてきて…
「け、謙也くん!大丈夫ったい?」
目を開けた俺に千歳が反応しておっぱいが揺れた。
そうだ、あのおっぱいに挟まれたんや。
「俺、気絶しとった?」
「うん…ごめんね。うちのせいっちゃ」
申し訳なさそうに謝る千歳の手が俺の額に優しく触れた。勿論ドキドキした。したけれど、それ以上に両頬に残る気絶してしまうほどの甘い至極の感触には勝てなかった。











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