水曜日



昨日とはうってかわってひどい雨だった。雨の音がザァザァ煩い。

俺はひどくもやもやしていた。原因はあれだ。ごみ男、"千歳"のことで、ピンポイントで言うとその千歳の首筋にあったキスマーク疑惑の鬱血のことだ。少し濃いめの肌に何故か良く映えた赤い点が目に焼き付いて離れない。
あれはなんや?虫か?だって今12月やで?じゃあなんやねん。…もしかしたら本当にキスマークで、あの二人がちちくりあってたとか…

「…、」

いやいや虫ですませや、自分。
"千歳"が隣人さんに抱かれてる様子を少し想像して眉を寄せる。嫌悪とはまた少し違った気持ちだった。
俺は頭まで布団をかぶり、何にも出来ない今日が早く終われば良いと願った。そうだ、こんな気持ちになるのは雨のせいだ。











「?!」

俺は勢い良く目を開けて、キョロキョロする。

「き、気のせいやんな?」

むしろ気のせいだ、と言い聞かせるように声に出して頷いた。身体の向きを変えて、再び目を瞑る。

「っ!」

気のせいじゃない。
女の人が啜り泣くような声が聞こえる。よく心霊番組の再現VTRとかである、ううう…とか、あぁぁ…とか苦しそうにくぐもった声だ。引っ越しして半年、まさか初★心霊体験なんて。

(落ち着け、落ち着くんや白石蔵之介)

とりあえず気配は感じない。目を動かすが怪しい人影はない。身体は動く。大丈夫だ、と胸をおさえたとき、俺の目は大きく揺れた。

ちゃう。
幽霊ちゃうわ。

心臓が跳ねる。
今はっきり聞こえた、隣人さんの名前を呼ぶ切ない声。
俺は一度も"千歳"の声を聞いたことがないのに、その声を"千歳"と決めつけた。いや"千歳"しかいない。そして、"千歳"と隣人さんがヤってる姿を今度はリアルに想像をしてしまう。質の悪い妄想だ。でも聞こえてくる息づかいとその妄想がシンクロし、冷めるどころか俺は逆に興奮していた。息が荒くなるのが分かる。"千歳"の一際高い声が聞こえて、下半身がきゅうっとなった。堪らなくなった俺はズボンを下ろし、既に反応し始めていた自身を握る。その声を、"千歳"の声を少しでもクリアに聞こうと必死に壁に身を寄せた。

(…何しとるんやろ、俺)

どうしようもない行為だと分かっていても止まらない。枕元が冷たいと感じたとき、俺は初めて自分が泣いている事に気付いた。それでもひたすらその興奮の為だけに擦り続ける。

…最低や。


雨の音が、ザァザァ煩い。











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