月曜日
部屋の鍵を探していると隣のドアが開く。中からスキンヘッドのお兄ちゃんが顔を出した。
「あ、おはようございます」
「どうも。なんや飲み会?合コン?」
「あ〜只の男だらけの飲み会ですわ」
苦い顔で肩を竦めると、隣人さんはお疲れさん、と俺の肩を叩いて笑った。
隣人さんはスキンヘッドで眉毛EXILEでシルバーアクセサリーじゃらじゃらしてて、見た目は怖いが、ごっついい人で、引っ越してきてから何かと世話になっている。
少し話して、仕事へ行く隣人さんを見送り、体力が限界にきていた俺は、雪崩れ込むように部屋に入った。
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「うわっ、もう夜やし…っうわぁ…さいっあくや…」
目を覚ましたら頭は痛いし、吐き気はする。なんて基本に忠実な二日酔いだ。
俺は頭を押さえながら立ち上がり、ポカリでも買いにいこうと上着を羽織る。
「ごみ男」
台所の脇にあるごみ袋を見て、今朝見かけた男を思い出してしまった。何だか急に心配になってしまう。世話焼きの嫌な性分だ。
(もし、まだおったら…声かけてやるか)
俺は小さくて頷いて、靴を引っ掛けノブに手をかけた。
「お、白石くん」
声をかけられて目をやると隣人さんだった。
「お帰りなさい」
「お〜今日良く会うな」
隣人さんは手にいっぱいビニール袋を持っていた。が、それより何より180cmを超える隣人さんの後ろでさらに大きいふわふわした頭が揺れているのが気になる。でかい。なんやアレ。隣人さんと話ながら視線をずらしてみる。
「え」
「ん?どないしたんや?」
隣人さんが不思議そうな顔をして、後ろを振り返り、俺と交互に顔を見た。
「なんや知り合い?」
「や、ちゃいます」
俺は慌てて首を振る。
「ふーん。あ、じゃあ、俺たちこれから宴会やから。わるいな」
「ああ、はい。じゃ」
隣人さんは手を振って、自室のドアを開けた。いつもならさっさとコンビニに行くのだが、俺は動けない。目が離せない。
そう間違えるはずもなかった。
ごみ男。
隣人さんの後ろにいたのは、今朝ごみ置き場で寝ていたあの男だった。…隣人さんの友人やったんや。
俺の視線に気がついたごみ男は、こちらを見て目を細めて驚くほど柔らかい笑顔を向けて頭を下げた。そして、襟の広いカットソーから覗いていた、その笑顔には似合わないゴツめのネックレスがじゃらりと揺れる。
それは、今朝、隣人がしていたものだった。
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