愛されているような気がした
突然の金太郎の電話から数日後。出掛ける約束をした当日。千歳はしぱしぱする目を擦りながらの時計を見た。最近とんと見ない時間を指していたことに千歳は苦笑いになってしまう。
「…待ち合わせまで五時間もあるたい」
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「男だけでも入れるプリクラもあったんやな」
金太郎はさっき千歳と撮ったプリクラを見ながら感心したように頷いた。
「そぎゃん珍しか?」
「おん。最近は男は女と一緒やないと入れへんねん。だから中も女ばっかりで、いつ行っても男なんて全然おらんのや」
確かに自分達は好奇の目でみられていた気はする。それよりも、少なくとも金太郎が何度か女子と来たことがあることに千歳は胸がチリっとした。
「半分は千歳の分な」
「すまんね」
「なんかこーゆうのええな〜半分こなんて初めてや」
「ばってん、プリクラは二人で撮れば半分にするもんじゃろ?」
千歳は首を傾げた。現に今だって自分と半分に分けているではないか、と思う。金太郎は差し出されていた千歳の手にプリクラを乗せた。
「だって、俺別に半分もらってもしゃーないし」
ごく自然に出てきたその言葉が千歳を動揺させる。でも普段と変わらぬ様子の金太郎に恥ずかしくなってしまい、小さく咳払いをした。
「て、なんで千歳の手、まだこんなにでっかいねん!」
「昔に比べたら金ちゃんも随分でっかくなったばい」
千歳は笑いながら金太郎の頭を撫でる。
「やめぇ!俺だってもう18で、立派な大人やで!なんやねん千歳のアホ!」
金太郎はそっぽを向いて面白くなさそうに唇を尖らせた。あどけない表情が昔のままだ。少し黙っていた金太郎が急にこちらを見てにっと笑った。
「千歳、手ぇ繋がへん?」
「なんね、金ちゃん大人になったんじゃなかと?」
「嫌なんか?」
昔みたいに甘えたような目で見られてしまうとすごく弱い。返事に戸惑っていたら手をぎゅっと握られてしまった。
「ちょ金ちゃんっ」
「しらん。もう繋いでもうたもん」
金ちゃん、と再び抗議しようとした声を飲み込んでしまった。突然、手を繋いだまま金太郎が走り出したのだ。
「と、止まりなっせ金ちゃん!」
「聞こえへんー!」
金太郎は楽しそうに声を上げて笑っていた。千歳は足が縺れながらも必死についていく。更にぎゅっと握られる手。そこから二人の体温が溶け合ってゆく。離れなくなってしまいそうで怖かった。
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