職権乱用の落とし穴



白石蔵之介は考える。

一人で部室の机に突っ伏してうたた寝していたはずなのに、なぜ隣でピッタリ体をつけて千歳が眠っているのか?
部室にはちゃんと鍵をかけたし、鍵はここにある。どうして?
それより何より問題なのは

なぜ千歳はこんなに良い匂いがするのか?

(クラスの女子でさえこんなええ匂いせぇへんで)
白石は机に突っ伏したまま視線だけ千歳に向ける。心なしか少し香りが近くなった気がした。
(な、なんちゅう絶頂や)
危ないと思いつつ出来心で顔を向けてみる。真っ正面からの良い香りに胸が異様にドキドキしてしまった。白石はたまらず千歳の耳元に近付く。千歳の髪が白石の鼻先を擽り、香りが自身を支配した。ごくりと喉が鳴ってしまう。
「ぁ、かん」
白石は思わず吐息のような声を漏らす。千歳が体を小さく震わせた。慌てて体を離し、そこでやっと白石は不可抗力とはいえ耳元で囁くという、やらしいことをしでかしてしまったことに気がついた。
(何やっとんねん俺)
顔が熱い。手の甲を口元にあて、呼吸を整えようとする。が、突然千歳が起き上がった。眠気眼が白石をとらえる。
「ちちちちち千歳、なんでここおんねん!」
(声、裏返ってもうた!)
千歳は二三度瞬きをすると握っていた左手を開いた。そこにはちょこんとクリップが乗っている。
「おま、それピッキン」
「あ〜白石ぬくかね〜」
「っっっっ!?」
心臓とか(主に)下半身が爆発するかと思った。いや、正直、秒読み入った。にへらと笑った千歳が白石に擦り寄ってきたのだ。良い匂いとか、良い匂いとか、千歳の体温とか、丸まった背中とか、良い匂いとか、とにかく良く分からないものぐるぐる渦巻き自分を支配してゆく。それはムラムラとしたうずきに似ていた。そっと体を離そうとすれば擦り寄られ、またそっと体を離そうとすれば擦り寄らる。トムとジェリーで。千歳を気にせず逃げ出してしまえば良いのに、それが出来ない。ああ、良い匂い。今の白石に出来ることと言えば、なるだけ鼻で息をしないことだけだった。
(こんなん絶頂越えて拷問やで!)
幸せそうな天使の寝顔も今は悪魔にしか見えなかった。





――――――――――
白石が千歳に全力でハァハァしてないときの話(笑)千歳の匂いはせっけん的なの希望。で、たまにおかんとかミユキとか来ると遠慮なくマシェリとか補充してくから翌日大変な事になる(白石が)ちなみに千歳は人に言えない108の特技をもっているという裏ひろ氏設定。











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