イミテイション | ナノ



―擬似家族、というらしい。

私が生まれた数年後、母は二人目の子を授かった。母と父は心底喜んだ。勿論妹が出来ると聞いた私もだ。だけど、妹が生まれた直後に父は病死してしまった。末期癌だった。
私が小学生になった頃、母は私達の前から消えた。綾里の家系は霊媒師としてかなり有名だったのだが、それが災いして、母の綾里舞子はかなり難しい霊媒を無理矢理やらされて失敗してしまった。沢山のジャーナリスト…特に小中大に叩かれ、母は失踪してしまった。
手紙はなく、私は妹を連れてある夫婦を尋ねた。その夫婦は、綾里の分家から結婚の為に抜け出してきた綾里千尋と、旅行先で知り合ったらしい不思議な雰囲気を出す男の人だった。私は千尋を姉の様に慕っていたため、しばらくその夫婦の所で養ってもらおう、と思った。しかし。
事はそう上手くいくはずもなく、夫の方が交通事故にあってしまった。元々夫婦共働きにも関わらずぎりぎりで暮らしてきた為、交通事故で働き手が減った今、私達を養うだけのお金がお姉ちゃんには無かった。
私達は途方にくれた。もうどこにも行く当てもなく、お姉ちゃんが何とか用意してくれたアパートの一室で、母が残したはした金を手にしばらく生活した。だけどすぐにお金はつきた。お姉ちゃんも医療費等で無理を言わせている。家賃も苦しいだろう。私達は出ていくことを決めた。







色々、あった。
私はもともと魔術師の子供だった。お父さんはあいぼうと色んな所で奇跡を起こしてきた。私もマジックセットやぼうしくんで練習した。いつか三人で『あるまじき』魔術を起こしたかった。
ある日、家のベッドで目が覚めると、知らない人がお父さんとしゃべっていた。変わった名前。ナルホドー、っていうツンツンのおじちゃんだった。私は頑張ってナルホドーさんを見抜いた。だけど何も見つからなくて、この人はとってもいい人、と思った。実際、そうだった。来てくれるたびにお土産をくれたし、私の魔術で死ぬほどびっくりしてくれたし。優しくて優しくて、私はナルホドーさんが好きだった。
…お父さんのあいぼうが、突然家に来て私に言った。お父さんはいなくなった、いつ帰るか分からないって。お父さんからの伝言で、私はナルホドーさんのところに行きなさい、と言われた。ナルホドーさんの家はホテルの向かいにあった。私は意を決してドアを開けた。
そこには、不思議な和服を着た姉妹にみえる女の子がいて、困った顔をしたナルホドーさんがその二人と話をしていた。ナルホドーさんは私に気がついて、こう言った。




「…話は聞いてるよ、みぬきちゃん」