結果報告 | ナノ



「関係者が、全員…?」
「断定しても良いくらいね」

たった今糸鋸刑事から告げられた言葉が、この事件の犯人の目星をついている。私は急いでロジックを組み立てた。
容疑者の名前は峡生(きょうき)。
成歩堂を誘拐したと考えられる第一人者、だ。

「みっみみ、御剣検事ィィィィィィィィィィ!、痛ぁッ!!」
「いきなり大声を出さないで頂戴!」
「どうした、何があった」

さっきまで急にかかってきた電話に対応していた糸鋸刑事は、顔を真っ青にしてバタバタと此方へ駆けてきた。今にも泡を吹いて倒れそうなその様子に、ただ事ではないと捜査官達も注目する。
糸鋸刑事ははあはあと息を整え、そして言った。

「成歩堂弁護士が保護されたッス!」
「何だと!?」

糸鋸刑事の報告、驚いている冥の顔が、私の何かを冷やしていった。前とは別の意味で足の力が抜けて、ふらふらと壁に体を預けた。
脳内に踊る『良かった』という言葉が力を奪っていく。ああ良かった。成歩堂が。私の、私の。愛する人が無事だった、と。
糸鋸刑事の話では、成歩堂は今病院で落ち着いているらしい。車の手配をさせて冥と共に事務所を出る。何の手がかりもないままで廊下に佇んでいた時はもっと、暗かったのではないかと思うほどで。階段を下ると病院行きの乗用車がすでに待っていた。

「レイジ」
「何だ、メイ」
「私はここで捜査の指揮をとるわ。ヒゲを放っておくとどうなるか分からないから」
「しかし…」

鋭い瞳を向ける冥に何を言って良いか口ごもれば、足元に電流のような痛み。鞭を持っていない方の手で、袖のすそを握り、冥は私に言う。

「貴方は先に行ってなさい」

さあ、早く!
二度、三度と鞭が鳴る。私は言われるまま車に乗った。冥が今どう思っているかは分からないが、成歩堂の顔がちらつき慌てて窓を見る。病院までそんなに遠くないここではかかって10分というところか。
やっと会える。綻ぶ顔に私は抵抗する術はなかった。