暗中模索 | ナノ



いやな音がした。鋭い金属をこすりあわせた音。きいい、と耳を刺激して頭蓋骨と脳を、神経を削っていく。眼球が落ちそうなくらい見開いたまぶた。ぼろぼろとあふれ流れる体液にキスをする。「わたしたちどうなるの、ねえ、パパ」成歩堂みぬきはまだ夢見心地なのか、成歩堂龍一に焦点を合わさずうわ言を繰り返している。胸元が大きく開いた舞台衣装はかなしいくらいぼろぼろでみぬきのこころと同じだ。死んだと思ってた、とみぬきから言葉がおちてパーカーに染み付いた。かすかな安堵と緊迫が孕み気が狂いそうなほどの音にため息をつく。「みぬき、大丈夫だから」き、いいいぃいん。ふたりの鼓膜をつらぬく。ばたり、涙がふたりぶん、確かにおちる。救いをさがせど、そこには暗中が我が物顔でたたずむのみで、吐き出したはずのため息はひとりでにすべりおりていった。

暗中模索に関する自殺未遂