11/11(ポッキーの日)




「鬼道、豪炎寺、ゲームしよう」

突然の円堂の提案に俺も豪炎寺もキョトンとしてしまった。
ここは学校でゲームといっても何もない。

「これ」

差し出されたのは赤い見慣れたお菓子のパッケージ。ポッキーだ。

「??」

「ああ、成る程な」

豪炎寺は分かった様だが、俺には皆目検討がつかない。

「ポッキーが、何なんだ?わかるように説明してくれ」

「説明するより、やった方が早い」

パリパリと箱を開け、中の袋から1本取り出した豪炎寺が言う。

「鬼道やるか?」

「いや、取り敢えず見ている」

「なら、豪炎寺しようぜ!」

円堂はニコニコしながらはしゃいでいる。そんなに楽しいものなのだろうか。

「……まあ、別にかまわないが。鬼道、本当にいいんだな?俺も円堂も、多分途中でやめないぞ」

何故念を押す?そんなに時間が掛かるのか?

「まあ、部活も終わっているし…別に構わない」

「わかった」

豪炎寺が、少し悪戯めいた笑みを浮かべたのが引っ掛かった。良くないことを企んでいる顔と似ている。

「豪炎寺、俺チョコの側がいい!」

「ああ……ならホラ」

豪炎寺にポッキーを差し出され円堂はぱくりと先端を咥える。

「ん」

円堂が促す様にポッキーを突き出すと、反対側を豪炎寺が口に含む。

「!?な、何を…お前達は…」

何だ、これがゲームだというのか?勝敗はどう決するんだ。だいたい……この2人だけの世界みたいな、甘い雰囲気は何だ。

「……ん」

「…っ…」

お互いに食べ進めていき、折れたらダメなのだろう。手を使わないようにと円堂が豪炎寺の手をぎゅっと掴んでいる。
薄く目を開いたまま顔を近付ける2人は、キスする時の様に顔を傾けている。円堂の方がやや押しているが……。

「わかった、から。もう止めてくれ…っ頼む。……見て…られない」

豪炎寺はこちらに視線を向けたが、またすぐに円堂に向き直った。途中でやめるつもりはない、とはこの事か。

「……円堂っ、豪…炎寺…っ!」

思わず2人の腕を掴む。

「……」

「…ん…?」

2人が口付けるまであと少し、という所でピタリと動きを止めチラとこちらを見る。

「……2人だけで……するな」

つい、嫉妬から止めてしまった事が恥ずかしい。思わず語尾が小さくなる。顔が熱くて、多分かなり赤くなっているだろうなと思った。

ぱき、とポッキーの折れる音がした。2人の口がもぐもぐ動いている。

「だから、いいのかと聞いただろ?」

「こんなゲームだと知らなかったんだ……」

「……鬼道、寂しかった?」

「そ、そんなんじゃ…」

寂しかった。円堂が当り前のように求めて、豪炎寺が自然に受け入れて。
胸の辺りがぎゅうっとなる。誰も入り込めない雰囲気だった。俺だって2人共好きなのに。

「……なら何故止めた」

「……ルール違反、だからだ…っ。3人で決めただろ…。抜け駆けは禁止だから…キスは、ダメだ」

言い訳だ。なんだか1人だけ仲間外れにされたみたいで寂しかっただけだ。2人が好きなのに、2人に嫉妬している。

「それに……2人だけで…ズル…い…」

「……鬼道、可愛い!」

ぎゅっと円堂に抱き締められれば、不覚にも安心してしまう。やれやれと豪炎寺が微笑みながらこちらを見ていた。

「なら、次は円堂と鬼道でするか?」

「おう!」

「…ら…ない」

「ん?鬼道?」

「…ポッキーは、いらない…っ」

「「!」」





ポッキーなしの、ポッキーゲーム?



happy day 11/11 !



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