present プレゼントは買わない、と3人で話し合って決めていた。 中学生の小遣いで、各々2人に買うのは大変だろうというのが主な理由だ。 それに、クリスマスに3人で一緒にいられる事が何よりも嬉しい。 * 豪華な夕食を、鬼道に教えて貰いながら食べる。ナイフなんて滅多に使わないから、少し畏まってしまった。 料理はとても美味しくて、食べた事のないものがいくつもあった。円堂が、これ何だ?と聞くと鬼道が丁寧に答えてくれる。 「トリュフだな」 「とりゅふ、ってチョコの?」 「…い、いや…きのこだ」 鬼道が、円堂のチョコレート発言にビックリしている。 こちらとしては、トリュフがこんなに料理に使用されている事の方が驚きなんだが。 「きのこ!?豪炎寺は知ってたか」 「ああ、知識だけは。俺も食べるのは初めてだ」 わいわい質問したり、発見があったりと賑やかで楽しい夕食を過ごした。食べきれない分は皿に取り分けて、後で部屋でつまむ事にする。 空腹が満たされて少しまったりしようと、鬼道の部屋でサッカーのDVDを観る事になった。けれど、サッカーとなると全員が白熱してしまって、まったりどころかケーキを食べるのも忘れて、フォーメーションなど議論してしまった。 「…もう、こんな時間か」 鬼道が時計を見て少し驚いている。楽しい時間は経つのが本当に早い。 「風呂を沸かしてあるから、順番に…」 「待った!」 突然掛けられた円堂の声に、鬼道も俺も驚いてピタリと固まってしまった。 「円堂?」 不思議そうに問う鬼道に、待つように言うと、円堂は鞄をゴソゴソさせはじめた。 すぐに、深い緑色の包装紙に、赤と金のリボンが掛かった箱を取り出す。 「え、円堂っ?」 はい、と赤いリボンの箱を渡された鬼道が、驚きと焦りで目をぱちぱちさせている。 続けて俺の手のひらにも、コロンと金のリボンがついた可愛らしい箱が乗せられた。 ──クリスマスプレゼントだ。 買わないと決めた筈なのに、抜け駆けされてしまった。 「プレゼントはなしだと3人で決めただろう…っ、俺達は何も用意していないぞ…?…なぁ、豪炎寺?」 「ああ…俺も用意していない」 円堂に裏をかかれるなんて、俺も鬼道もまだまだだ。 ……でも、嬉しい。 「いいからさ、開けてみてくれよ!」 円堂が早く早く、とわくわくしながら見つめている。そっとリボンを解き、包装紙を丁寧に開く。箱を開ければ、中には。 ……ゆび…わ…? 優しい銀色の、シンプルなリングが入っていた。 開けた鬼道も心底驚いたのか、絶句して指輪を見つめている。 「今はまだ、おもちゃみたいなやつだけどさ、これからもずっと一緒にいたいって事、きちんと伝えたかったんだ」 これからも、ずっと3人で。 「……えん、どう」 「…き、鬼道?…っまさか泣いてるのか!?」 「泣いてなど…いないっ」 鬼道が頬を染めて俯いている。気持ちがわかる。驚きと、幸せと、嬉し涙。 気付けば、円堂がこちらを心配そうに見ていた。気に入らなかった?と目が聞いてくる。 「豪炎寺?」 「ありがとう円堂、……大切に、する」 これだけ言うのが精一杯で。 指輪を貰えるなんて思いもしなかった。 自分達が世間では異端だとわかっているから、ずっと3人ではいられないという不安は捨てきれなかった。 周囲に認められない、祝福されないとわかっていたし、それを承知でこの関係を続けている。 心の片隅にそれは常にあり、ふとした拍子に表れては胸を切なくさせた。 だから、俺も鬼道も未来の話を避けていて。 「何年後は」とか、「将来は」なんて一度も話さなかった。幸せな現在しか見ないように、無意識でしていたのかもしれない。 なのに円堂は。 「ずっと2人とも傍に居てくれよな!」 鬼道と共にぐんと引き寄せられて、頬にキスされる。 ずっと抱えていた悩みなんて、一瞬で壊して。 円堂と鬼道と、これから先もずっと一緒にいる。そうありたい。 少しだけ震える手で円堂と鬼道に触れ、これからも傍にいる、と。 誓いのキスをした。 Happy happy christmas !!! ←→ ×
|