dinner




12月24日。

3人で鬼道家に泊まってクリスマスを祝う事になっていた。
お菓子やジュースは持ち寄り、ケーキだけは少し贅沢にイチゴとチョコレートの2つを予約して。
プレゼントは、敢えて買わない事にしていた。

喋って、笑って、楽しく過ごして。3人一緒にいられたら、それでいい。

そう相談して決めていた。



*



「……スッゲー!」

「……本当にすごいな」

テーブルに並べられた料理の数々に、思わず円堂と豪炎寺が感嘆の声をあげる。

「…す、すまん…その、友達とクリスマスパーティーをするんだと話したら…」

家に友達を呼ぶ事自体あまりなかったせいか、クリスマスに友達を招待したいと言ったら、義父さんも使用人の皆も大層喜んでいた。

普通でいいと念を押したのだが、張り切り過ぎてしまった様だ。
3人だと話した筈だが、目の前に並ぶ料理は食べきれる量ではない。しかもこれは、もう大使館などで出されるレベルの料理だ。豪華すぎる。

何だか返って変な空気になっていないだろうかと、不安になる。

今まで何度か「それは一般家庭ではあり得ない」とか、「そんなの鬼道の家だけだ」と人に言われた事がある。
鬼道家特有、というか大きな家と一般の家庭では色々と常識にズレが生じている様で、皆は羨んで言っているのだと分かっていても、壁を感じて少し寂しかった。

伺う様に2人の方を見ると、円堂が感心したように口を開いた。

「鬼道、愛されてんなー」

「…え?」

思わず問い返してしまう。


愛されている?


「こんなスゴい料理用意してくれるなんて、鬼道、家の人に愛されてるな!」

「本当だな。というか、これは愛され過ぎだろう」

「でも、俺達の方が愛してるけどな!」

「まぁな」

予想外の反応に驚いた。
羨むのではなく張り合っている2人を見て、不安は溶けて跡形もなくなった。じんわりと胸があたたかくなる。


裕福だから、じゃなく愛されているから。


ああ、そうか。
この料理は鬼道財閥の跡取りだからと豪華にしたのではなく、俺に友達と出来るだけ楽しんで欲しいと、そう願って豪華に作られていたんだな。

今までの、豪華過ぎる弁当や、過保護すぎる送迎を思い出す。何度、普通にして欲しいと頼んだ事だろう。

義父さんは仕事関係のパーティーで出張、クリスマスは使用人達も休みにしている。

次会った時に、皆にお礼を言おうと思った。今までの分も心を込めて。

2人には色々気付かされたりと、学ぶ事が多い。一緒にいると救われる事がよくある。まだまだ自分は未熟者だ。

顎に手を当てて考え込んでいた豪炎寺が、こちらに視線をよこす。

「鬼道、確かこれ食べる時にルールがあるよな」

「そうなのか?」

円堂はキョトンとしている。本当はルールなんてどうでもいい。けれど。

「いいだろう、教えよう」

ナイフとかカッコいいな!と笑う円堂も、完璧にマスターしてみせると真剣な豪炎寺も。


愛しくて。


2人と一緒にクリスマスを過ごせる幸せに、あらためて感謝した。



Happy christmas !!!





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