snowflake




いつもの様に3人で並んで下校している時、ふわふわと白い物が空から降ってきた。

「あ、雪だ!」

「ほぅ、珍しいな」

2人とも、さっきまで寒い寒いと言っていたのも忘れて、無邪気に笑っている。

円堂と鬼道が嬉しそうだと、俺も嬉しい。見ているだけで幸せな気持ちになる。

そのうち、円堂が上を向いたまま口をぱくぱくし始めた。

「円堂?」

「雪をうまくキャッチして食べる!」

「雪の落ちる軌道を読み、素早く落下点に動く。新しい特訓だな」

張り切る円堂を止めるどころか、腕を組みながら鬼道も頷いている。2人ともはしゃぎすぎだ。
この時期に雪は珍しくて、テンションが上がっているんだろう。

じっと空を見上げて微笑んでいる鬼道は隙だらけだ。
そっと近寄り後ろからぎゅっと抱き締めて、わざと耳元で低く囁く。

「…雪ばっかり、見るな」

「……っ!?ご、豪炎寺っ……?」

「嫉妬する」

そのまま耳に軽くキスをして離れると、顔を真っ赤にした鬼道が耳を押さえて睨み付けてくる。

「耳まで真っ赤だ」

「──…っ!」

何か言いたそうな鬼道をそのままに、上を見たままフラフラしている円堂の傍に行く。足元を見ていないから危ないな。

思った通り、歩道の縁石に躓きそうになった円堂の腕を取り、引き寄せる。

「わっ?」

「そっちは危ないぞ。…雪、食べられたか?」

「ああ!6こだけだけどな」

「……なら」

俺にも分けてくれ、と返事を待たずに口付ける。かすかに舌を触れあわせてすぐに離す。

「…ご、豪炎寺…!?」

「……雪の味は、しないな」

横で不満そうに見ていた、まだ少し顔の赤い鬼道にも口付ける。

「な?」

「……しないな…」

「ゆ、雪の味ってなんだよ…っ…」

2人の喜んでいる顔が好きだ。けれど、2人が驚いたり照れたりしている顔も好きなのだ。

「2人とも、隙だらけだったぞ」

からかうように言うと、円堂も鬼道も悔しそうで、納得がいかないという表情をしている。ああ、その顔も好きだ。

「なぁ……鬼道んち、今日大丈夫か?」

「ああ。やられっぱなしは性に合わない」

2人がこちらを見ながら、今日のこれからについて話している。ちょっと2対1では分が悪い。

「悪いが俺は帰って…」

「だめだ」

最後まで言わせても貰えない。鬼道が珍しくやる気だ。

「豪炎寺、寒いし早く鬼道んちに行こうぜ!」

ぐいぐい円堂に引っ張られて、最早逃げる事は無理だと諦める。特に今日は予定もないし問題はない。

もしかしたらさっきの仕返しをされるかもしれないが、まぁ、2人の色々な表情が見れたからいいか、と白い空を見上げながら思った。



*



「豪炎寺、自分から誘ったからには、覚悟は出来ているんだろうな?」

「明日は休みだしな!」

「!?」






雪の降る日も、3人であたたかく。





Happy december 2011 !!!


END




×
- ナノ -