envy




部活が休みの日曜日。
休日を利用して、普段部活優先でなかなか出来ない勉強をする為に、俺の部屋で勉強会が開かれていた。

「やっぱ鬼道の部屋のテレビ、でっかいなー!」

「ほら円堂、勉強するぞ。大体、この勉強会はお前のために開いたようなものなんだぞ?」

最近、円堂の成績が著しく下がっている。前回のテストの点数を聞いてさすがにこれはマズいと、俺も豪炎寺も焦った。
当の本人は全く気にしていない様子なので、やや強引に勉強会をセッティングしたのだ。

「えーっ!せっかく休みなんだからさ、サッカーとかしようぜ?」

ああ、もう本当に。
相変わらずのサッカー馬鹿だ。

「お前の頭の中はサッカーしかないのか!?」

「んー……あとは、鬼道と豪炎寺?」

「!?」

円堂の思わぬ返答につい動揺してしまう。豪炎寺を見れば嬉しそうに上着を着て……ってなぜ着る?

「豪炎寺、なぜ上着を…」

「外、寒いぞ?」

こいつもか…。
大体、円堂の成績について最初に相談してきたのは豪炎寺だろうに。

「サッカーはしない!今すぐ脱げ」

「えーっ、鬼道のケチ」

円堂が、口を少し尖らせている。
何と言われようとも、ここで甘やかす訳にはいかない。このままどんどん成績が下がったら、円堂が進級出来ないかもしれないのだ。

「鬼道はサッカーしたくないのかよ」

「そもそも、今日は勉強の為に集まったんだろう!」

俺と円堂のやりとりを見ながら、豪炎寺が目を細めて笑っている。

「円堂、諦めろ。そのかわり勉強が終わったら、後でファイアトルネードしてやるから」

筆記用具を出しながら、仕方ないなと豪炎寺が交換条件を出した。サッカーで釣る作戦のようだ。

「ホントか!?河川敷で?」

「ああ。たくさんしてやる」

「やった!なら、やる」

パッと顔を輝かせ、鞄からガチャガチャ筆記用具やノートを取り出す円堂を見ながら、ちょっとだけ寂しく思う。


豪炎寺は、円堂の事なら何でも分かっているんだな。


2人の絆の強さが眩しくて、たまに羨ましい。俺じゃこうはいかない。

ぼんやりとそんな事を考えていると、ふと豪炎寺と目が合った。内心ドキリとしたが何とか平静を装う。

「どうした、豪炎寺。ほら、勉強始め…っ…」

くんっ、と豪炎寺の手に腕を引かれ、目を閉じる間もなく軽く口づけられた。

離れ際、

「そんな顔するな」

と小さく囁かれる。


全てバレている。


恥ずかしくて頬が熱い……。豪炎寺には何でもすぐに悟られてしまう。
違うんだと言い訳をしようとした時、突然円堂が声をあげた。

「あーっ、ずるい!」

「なっ…、何がだ…」

「そうやって、雰囲気でお互い何も言わなくてもわかる、みたいな……」

「…そ、そんな事は」

「ちょっと、寂しい」


寂しい?


訝しむ俺の表情に気付いたのか、円堂が少し慌ててしどろもどろになった。

「いやっ、たまに…ホントたまーにだけどさ!……羨ましいっていうか…」

ハッとした。

円堂も俺と同じように、寂しく思う事があるなんて思ってもみなかった。

なら、豪炎寺もたまには俺と円堂を見てそんな事を思ったりするのだろうか。
問うように視線を向ければ、少し困った様に微笑みながら豪炎寺が口を開いた。

「円堂と鬼道がさっきみたいに言い合いしているのは、俺も少し羨ましい」

「…っだよな!たまーに、ちょっとだけ、寂しかったり羨ましかったりするよなっ!」

やっぱり俺だけじゃなかったと、安心したように円堂が笑っている。


全員、思っていたのか。


「あっ、そうだ!豪炎寺と鬼道だけキスするのずるいっ」

「問題が解けたら、5問につき1回鬼道がキスしてくれる」

「な…!?」

そんな話聞いてない。何だそのポイントカードみたいなルールは。

「だから頑張れ、円堂」

「おう!」

「か、勝手に…っ」

円堂が張り切って勉強を始めてしまったので、嫌と言えなくなってしまう。
どうしてくれると豪炎寺を睨むと、澄ました顔で返された。

「もちろん、俺が5問正解してもキスしてくれるんだよな?」

「するかっ!」




時々寂しいのも、3人一緒だからこそ。




END



相互の記念に書かせて頂きました。まぐま様のみお持ち帰りフリーです。

相互、ありがとうございましたー!これからも、どうぞよろしくお願いします!



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