それはとても簡単なこと





「すきだなあ」

円堂が唐突に言った。






円堂、鬼道、豪炎寺。
いつもの三人で河川敷でサッカーをしていたら、急に雨が降ってきた。
仕方ないので一番近い円堂の家で雨宿りをすることになって。
特に何をする訳でもなく。
円堂の持っているサッカー雑誌を見たり。
何とは無しにダラダラしていた。
ぼんやりと鬼道と豪炎寺を眺めていた円堂は、唐突にそう呟いた。

「……何を?」

「あれ、オレ口に出してた?」

「出てたぞ」

鬼道の問い掛けにキョトンと目を丸くする円堂。
豪炎寺が呆れ顔でため息をついた。

「んー、いやもちろん鬼道と豪炎寺のことだけど」

「……………そうか」

「聞いといてなんだが、恥ずかしいな」

「でも急にどうした?」

「うーん、なんだろ」

「なんだそれ」

鬼道がクスリと笑う。
円堂はうーんと唸って腕組みした。

「なんか、変な話していいか?」

「ん…?」

「あのな、…二人と一緒にいるのが、オレ、すげー好きなんだなあと思ってさ」

円堂がにっこりと笑う。
急に何を言い出すのかと二人は驚きに顔を見合わせた。
自分でうんうんと頷きながら、円堂は続ける。

「そうなんだよな〜、河川敷も、鉄塔広場も自分の部屋も、まあサッカーはみんながいたほうが良いけど、鬼道と豪炎寺さえいれば全部が楽しいもんになるんだよな!」

「へえ…」

「…初耳だな」

「初めて言ったからな!」

豪炎寺が少し間を置いたあと、円堂の隣に座る。
それに答えるように円堂が豪炎寺に擦り寄ると、今度は豪炎寺が口を開いた。

「…オレも、二人がいるだけで、楽しい」

「な!オレさ、この三人が揃うのが一番良いと思うんだ!楽だし、ストレスもないし!はちょーが合うっていうのか?」

「円堂…お前もストレスなんて感じてたんだな」

「どーゆー意味だよ鬼道…」

鬼道がからかうように笑う。
それに円堂が少し苦笑いして見てから、鬼道も来いよと手招きした。
鬼道は素直にそれに従い、豪炎寺とは反対側の円堂の隣に座る。二人の肩を抱くと、円堂はそのまま後ろに倒れた。

「っ、円堂?」

「円堂…」

自然と倒された鬼道と豪炎寺は抱きまくらされている状況に戸惑う。
円堂はどこまでも自然に二人に笑いかけた。

「ずーっと一緒にいたいな!」

「……円堂、」

「そうだな、それが一番いい」

豪炎寺が円堂に擦り寄る。
円堂は上機嫌のまま豪炎寺に口付け、鬼道に振り向いた時にその顔が少し不安げに曇っているのに気が付いた。
その意味にやんわりと気が付き、構わずに口付けて空を見つめる。

「オレさ、二人がいたら無敵だから!」

「……?」

「円堂?」

「二人がいてくれれば、オレは二人を守るよ。だから、お願いな」

離れないで。
傍にいて。
円堂がそう言うと、豪炎寺ははにかんで、鬼道は少し泣きそうな顔で円堂に抱き着いた。





[それはとても簡単なこと]
(君がいてくれるだけでいい)






END


くじら様に相互の記念に頂きました。か、可愛い…!
本当に、どうぞこれからもよろしくお願いします!





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