弱点




鬼道を好きと自覚してから、無意識に目で追ってしまう様になった。

こうして見る様になってわかったが、鬼道は視野が広い。円堂もかなり広いと思っていたが、鬼道は試合だけでなくメンバー間の関係なども円滑にいく様に配慮している。
元気がない奴に適度に声をかけたり、チームの雰囲気が悪くなると休憩を挟む提案をする。かと思えば、やる気を出す為にわざと煽ったり。



いつもの通り何気なく目で追っていると、ガッチリ鬼道と目が合ってしまった。焦って目を逸らしたものの、逆に気になったのかこっちに来る。

「何かあったか?」

「いや、ただ見ていただけだ、すまない」

「…ならいいが」

ふと悪戯心が芽生えた。今まで涼しい顔で指示を出していた、その顔が焦るのがみたい。鬼道の一番弱い話題は。

「鬼道はすごいな」

「何がだ?」

「勉強もサッカーも優等生で、隙がない。これで恋愛も優等生なら完璧だ」

「…っ!からかうなら、もう相談しない…っ」

「すまない、冗談だ。でも全部優等生なんてつまらないだろ。俺はそれも鬼道の魅力のひとつだと思うぞ」

「…なに…言って…」

案の定、顔が真っ赤だ。本当に恋愛の話題に弱い。普段とのそのギャップが可愛いくて、相談も断れないのだ。

「完璧すぎたら、なんだか気後れしてしまうだろ?」

「……自慢か?」

「は?」

「そう言うお前は、どこか弱点あるのか?」

俺の弱点?突然話を振られたので動揺してしまった。

「勉強もサッカーも出来るし、女子にもモテる。完璧だろう」

少し当て付けるように言われて、更に驚いた。鬼道にそんなふうに思われていたのか。完璧で女子にモテる…か。

「俺は……別に1人に想われるだけでいい」

「ほう、…モテる奴は言う事が違うな」

茶化す様に返された。本当にたった1人でいいのに、その1人からは恋愛相談なんて受けて、更にアドバイスしている。

「俺も、恋愛方面は駄目だな……。しかもかなりの落ちこぼれだ」

「豪炎寺?…それはどういう…」

「そろそろ練習行かないとマズいな。見ろ、円堂なんて今にも呼びに来そうだ」

「あ、ああ」

まだ何か聞きたそうな鬼道を促して、練習に合流する。ここからはサッカーに集中しなければ。




唯一の弱点はお前なんだ、と心の中で呟いて。








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