どうして 雷門サッカー部は人数が多い。FFIに多く選手を輩出した事もあり、今ではかなりの部員数になっていた。 だから練習中、全く話さない相手がいるなんて当たり前なのだ。いや、それが普通だ。 けれど、豪炎寺に避けられているのは多分気のせいじゃない。 周りの皆は後輩達への指導に手一杯で、きっと気付いているのは当の本人の俺くらいだろう。 今週の始めから、豪炎寺と全く話をしていない。 部活が始まるギリギリにきて、終わればあっという間に帰ってしまう。 シュートの調子が悪いのか個別で練習しているため、部活中も全く話し掛けられなかった。 最初は、ただタイミングが悪くて話せないのだと思っていた。早く帰ってしまうのも、豪炎寺は最近忙しいんだなと軽く考える程度で。 佐久間との写真を見せたかったのに、と思った事を覚えている。 けれど、豪炎寺のシュートが決まらないのが少し心配で見ていた時。 こちらに一瞬気が付いた豪炎寺に、あからさまに顔を背けられた。表情には、はっきりとした拒絶の色が浮かんでいて。 驚いた。 どうして、と思った。 先週、部室で2人で話したのが最後で。好きな人に告白しないのか、なんて冷やかされたりしたのだ。 あの時は、別段変わった所はなかったはずなのに。 辛くて、苦しくて、必死に理由を考えても何も思い当たらない。原因がわからないので、謝る事も出来ない。 何度か伺う様に視線を送っても、豪炎寺はこちらを見向きもしなかった。 わざと向かない様に意識しているのだと、すぐに気付く。 今までは練習中に何度も目が合ったし、その時は優しく微笑んでくれたのに。 その笑顔がとても好きだったのに。 豪炎寺に理由を聞きたい。 聞きたいのに……こわかった。 メールして、返事が来なかったら。電話して、出て貰えなかったら。話しかけて、無視されたら。 何より、今以上に嫌われたらと思うと、何一つ身動きが取れない。 もしかしたら、恋愛相談が嫌だったのか。いや、最後に話をした時に、気に障る様な事をしてしまった?…実は、本当は前から嫌われていたのか?他の、自分には分からない何かが起こった? 原因がわからない為、悪い想像ばかりが幾つも、ぐるぐると頭の中で繰り返される。 ただわかっているのは、豪炎寺は理由なく人を避けたりはしない、という事だけだ。 胸が痛い。 このままずっと避けられ続けて、他人の様に疎遠になるかもしれないと思うと身体が震えた。 せめて、友人でいたい。 豪炎寺が好きだから、尚更臆病になっていた。 嫌われるのが怖い。 傷付くのが怖い。 何をしたせいで豪炎寺に避けられているのかわからない為、何をするにも不安になった。 日常生活もサッカーも、気を遣って内心びくびくしてしまう。 聞いてみて、もし本当に嫌われていたら。近寄るなと言われたら。 もう、立っていられない。 本当は、ちょっと腕を掴んで「何故、避けるんだ?」と聞くだけなのだ。難しい事じゃない。 聞けば、原因だって大した事じゃないかもしれない。 なのに。 いつから、こんなに自分は弱くなったのだろう。 恋は人を弱く、する。 ←→ |