恋人と主従関係 豪炎寺と付き合う事になった。告白された時は驚いたが、自分も密かに心を寄せていたので嬉しかった。 以前の帝国学園では、常に厳しい練習とハイレベルな授業で、恋をする余裕などなかった。 しかも幼い頃に両親を亡くし、妹を守らなければと思い続けていた為、甘えた記憶等も一切ない。けれど今は豪炎寺がいる。少しだけ甘えてみたい…そう思った。 最初は行った事のないファーストフード店に連れて行って貰った。次にお揃いの物を持ちたいと頼んでみた。豪炎寺は全部叶えてくれる。とても優しい。甘やかされるのはくすぐったくて、でも幸せだった。 本当に、何でも聞いてくれたのだ。 多少難しい事でも無理に叶えてくれる豪炎寺をみて、ふと思う。 帝国にいた時と…同じじゃないか? 帝国では俺の意見や希望は全て叶えられた。誰も俺に反対しない。今でこそ良いチームメイトだったと言えるが、影山時代は主従関係が出来上がっていたのだ。 主従関係?豪炎寺は…恋人の筈だ。どうして俺を注意しないのだろう?無理な物は無理と言って欲しい。 甘えは次第にエスカレートして、我が儘に変化した。我が儘を言っても、豪炎寺は叶えてくれる。 おかしい、こんな関係を築きたい訳じゃない。 気持ちとは裏腹に、我が儘は更に酷くなり、言葉遣いも帝国時代の様に荒くなって行った。傷付ける様な言葉を敢えて使う。 怒って欲しかった。鬼道それは違う、と言って欲しかった。対等な関係で有りたいと思う。どちらかが我慢する関係なんておかしい。 * 「そんな風に思っていたのか?」 豪炎寺が驚いて聞いてきた。別れ話をされて、たくさん泣いて、仲直りをした後の事だ。 「豪炎寺は何でも我が儘をきいてくれたから…不安だったんだ」 「我が儘というか…好きな人の願いは何だって叶えてやりたい、そう思うものだろう?」 「だ、だめだ………今度から無理なものは遠慮せず断って欲しい。俺達は…恋人だろう…?」 「ああ、分かった。けど………仕方ないだろ、可愛いんだ。甘やかして俺に繋ぎ止めておきたい」 「!?…あ……っ甘やかすな…!」 取り敢えず、もう我が儘を言って気持ちを試す必要はなくなった。 END ←→ |