A darling invader 「……ん、っ?」 夜中、身体の窮屈さに目を覚ました。何故か手が頭の上で纏められ、全く動かす事が出来ない。必死に周囲を見回したけれど、いくら目を凝らしても何一つ見えなかった。 手を縛られて、目隠しをされている? どうしてと混乱する思考の中でも、強盗やチームメイトの悪ふざけ等あらゆる可能性を考える。何とか手を解けないかと身体を揺らしたとき、突然肩を押されて驚いた。 「……っ!?」 誰だ、誰かがいる、しかもとても至近距離に。理解出来ない事象の連続で叫びそうになったその時、口に何かを捻込まれて声が詰まった。 肩を押した手は、身体をたどりパジャマ代わりに着ていたスウェットをいとも簡単に引きずり下ろす。 手が迷う事なく下腹部より下に移動した。下肢を曝され、中心に触れられてようやく自分がこれから何をされるのか察した。 やめろと叫びたくても、くぐもった音しか出せない。抵抗しようにも両脚の間に陣取られて、脚を閉じる事さえ出来なかった。 怖い、嫌だ。 思い切り開かされた脚の付け根を嬲る手に、鳥肌が止まない。 どうしてこんな、暗い、苦しい。 声も出せず呼吸もし辛い。力を込め続けた手首が、痛くてヒリヒリと熱を持っている。 思わず溢れた涙は音もなく視界を遮る布に吸い込まれた。 中心を扱きながら、身体を撫で回す手が気持ち悪い。なのに、刺激を与えられて反応を示してしまう自分が、酷く汚れている様に感じる。 嫌だ、嫌なのに。どうして俺の身体は。こんなの相手を喜ばせる。 「ん、ん!っ……ふ、ぅん…」 敏感な先端を弄られ背が反った。その反応を見るや強くそこばかりを責められ、浅ましく腰が揺れる。 嫌だ、気持ち良くなんてない。こんなことで達したくない。 襲い来る射精感をやり過ごそうと身体に力を込めていると、不意に後孔にぴたりと熱い何かが当てられて血の気が引いた。 まさか。 嘘だ信じられない、無理だ、そんなの耐えられない。 「ぅん!ん、ん──っ!」 身体を捩って抵抗しても、腰を押さえられびくともしない。当てられた熱が、じわじわと少しずつ中に押し入ってくる。 「んぅ!う、ぐっ…ん、ン!…ぅっ」 嫌だ、何でもするからやめてくれ。誰か助けて。 首を振りながらの必死な懇願も、相手には届かない。人に見られるどころか触れられた事すらない器官を、無理矢理割り開かれる。今までに経験した事のない激痛と圧迫感に、身体中が拒絶反応を示して強張った。 「ひ、──…ッ、ん!」 吐き気が酷く涙はひたすらに流れて、身体中が痛みに震える。 精神が崩壊しない為の本能かもしれない。受け入れ難い現状から目を反らす様に、最奥まで挿れられた瞬間に意識はブツンと途切れた。 * 朝起きると、部屋もベッドもいつもと変わらず普段通りだった。 衣服もきちんと身に付けていて、目隠しもなく手も自由。けれど、手首に赤く残る痕や、下半身に響く痛みと違和感が、あれは夢なんかじゃなく現実だったのだと、示していた。 夢じゃない。夜中に、俺は何者かに犯された。 何より身体中に不快な感触が残っている。身体を撫で回す無遠慮な感覚や、無理に身体に打ち込まれた痛みと熱さ。 そもそも今は合宿中で、ここは宿舎だ。もし外部の何者かに侵入されたとなると、大問題だ。 手を拘束したり目隠しをしたりと用意周到な事から、計画的なのは明らかで。 しかも犯人に心当たりがない訳でもなかった。 FFIで優勝してから、ずいぶんと応援の手紙等を貰ったが、中にはかなり偏執的な事を書かれたストーカーまがいの物もあった。 内容も、いつ俺が何をしたとか、どこにいたとか、詳細に書かれており、見張られているかの様で気持ち悪かった。 練習中に幾度も視線を感じて、室内練習に切り替えた事もある。 まさか、ストーカーが宿舎に侵入を? 確かに選手の出入りは自由だし、夜中は窓を開けて寝る者もいるだろう。合宿には結構な人数が参加しているので、安心感から防犯面は甘いのかもしれない。 監督に言うべきだ。 けれど、男である自分がよりにもよって強姦されただなんて。しかも完全に警察沙汰になる上、全国的にも有名な雷門中での事件はトップニュースとして扱われるだろう。 それに、きっとマスコミは内部犯の可能性も示唆するだろう。もう、そうなればサッカー部は滅茶苦茶だ。チームメイトや監督すら信用できなくなる。 ストーカーだとしたら、標的は自分だ。安易に騒がず、様子を見た方がいいかもしれない。それに今回限りの可能性もある。俺が黙っていれば、我慢さえすれば。 激しく震える身体を抱き締め、恐怖で竦む心をなんとか奮い立たせて。 暫くは様子を見る事に決めた。 (2015/01/09up) ←→ |