サキュバス

「おー、光やないか。どないしたんや?」

 昼休み。
 謙也の前の席を占領して、喋りながらメシ食っとったら、教室のドア開けて光が入ってきた。
 謙也が話し掛けても何も言わへん。
 いつもやったら三年の教室に入んの嫌がって、俺の方からしか会いに行かんのに、そんなことも気にしてへんみたいでずかずかと近づいてきた。

「ちょ……っ、光っ! 無視すんなやっ」

 謙也のことは完全無視で。
 ……光は左胸押さえて、熱っぽい目で俺を見つめてきた。
 その様子から俺はすぐに察する。

 ――これはもう間違いないやろ。

 俺は持ってた箸おいて、食べかけの弁当に蓋閉めると、

「なんや財前用事あるみたいやから、俺ちょっと話聞いてくるわ」

 わーわー言うとる謙也はほっといて、俺は光の腕掴んで教室出てった。

 廊下に出たら、

「すいません部長……せやけど俺、我慢出来んくて……っ」

 か細い声で光は早速謝ってきて。
 別にかまへんて返したら、光はまた謝ってきた。

 そんな光に苦笑漏らしながら、俺は人の出入りが一番少ないトイレに光を連れ込んで。
 一番奥の個室になっとるとこに光と一緒に入って鍵しめたら、我慢出来んかったんか、光はぶつけるように唇を重ねてきた。
 俺はそれに答えるように光の後頭部に手を回し、腰を抱き寄せて、深い口付けを交わす。
 唾液の絡み合う、卑猥な音が個室いっぱいに響いた。

 ――俺と光は別に付き合ってるワケやない。
 そういう関係やないけど、これまでに何回もセックスしとる。
 ……セフレ?
 まぁそれに近い関係やけど、ちょっとちゃうかった。

 俺は光の……いわゆる『エサ』なんや。

 こんな話信じられんかったけど……光は人間であり『淫魔』っちゅー生きモンでもあるらしい。
 先祖代々淫魔の血が混じっとる家みたいで、普通やったら人間の血の方が濃ゆーて淫魔の特徴はほとんど出ぇへんらしいんやけど、光だけは淫魔の血の方が多かったらしい。せやから淫魔の特徴というか性質みたいなもんが出て……見た目は人間そのものやねんけど、決定的にちゃうとこ一個あった。

 それは誰もが持つ欲によって起こる行為、セックスせんと生きてられへん体質らしい。
 さらに男やったらインキュバスで、女襲って快感得るんちゃうかて思うけど、ここでも光は特殊らしいて……女の淫魔――つまりサキュバスの特徴の方がよう出てしもたらしい。
 要するに突っ込まれて快感えな、光は生きてられへんっちゅーことや。

 たまたまというか、部活が終わって光の体調がおかしいことに気付いた俺が光の餌食になってしもた。誰もおらんかったからやと思うけど、保健室行くかと声掛けたら、いきなり今みたいにキスされて。そんでヤりたい言うてきたから、ワケ分からんかったけど部室で俺はシてしもた。

 光とのセックスはめっちゃ気持ちよかった。
 一回光の身体知ってしもたら、女なんか目に入らんようになって……俺は求められたら光とヤるっちゅー、おかしな関係が続いとった。

 唾液の糸引きながら口離して。
 荒い息繰り返して、光は縋り付くように俺の服掴んできた。

「ぶちょお……っ、はよぅ……はよシて下さい……っ! 部長の精液ぃっ、はよ欲しい……っ!」

 身長差のせいで、自然となる上目遣い。光の切羽詰まったような表情に、俺は下半身に熱が集まんのを感じた。

「しゃあないやっちゃな……ちゃんとヤったるから、そう急かしなや」
「せやけど……っ!」

 たった一秒でも、光にとっては苦痛に感じるようで。
 俺は光のベルトを手早く外すとズボンごとパンツを脱がせて、便器の蓋閉めたらその上に座らせる。
 トイレやとかそんなん気にせんと、俺が床に膝ついたら、光は察したんか自分から足開いてきた。

 恥ずかしがっとる余裕もないみたいや。

 俺は勃ち上がり始めとる光のモンを口に含んで、軽く扱いたっただけやのに、

「ひあぁァぁっ!」

 光は高い声上げて呆気なくイってしもた。
 俺は自分の咥内に吐き出された光の精液を手の上に垂らして。
 粘り気のあるそれが、糸を引くさまが面白うて指で遊んどったら、

「ぶちょお……っ、遊んでんと……はよぉ挿れて下さい……っ!」

 光に怒られてしもた。
 全然迫力ないんやけど、光は潤んだ瞳で俺を睨んでくる。

 ――ホンマに余裕ないみたいやな。

 あんまり焦らすんも可哀相やから、俺は光に後ろ向くよう言うて。震える体を動かして、光は便器の蓋ん上に手ぇついて俺の方に尻向けてきた。
 光の精液を絡めて指に馴染ませたら、俺は物欲しそうに収縮を繰り返しとるそこに指を突き入れる。

「ふぁァ……っ!」

 ナカを掻き乱すように指を動かせば、光のそこはすぐに柔らかくなって。

「光んナカ、めっちゃ熱い……」

 指に纏わり付く光の粘膜は、火傷しそうなぐらい熱かった。
 慣らさんと光が辛い思て、俺はゆっくりナカを解しとったんやけど、

「そっ、んなんええからぁ……っ、はよぅ、あっ、ぶちょおがっ、欲しい……っ!」

 それさえも焦らしに感じるようで、光はモノを挿れるよう頼んできた。首を捻って顔をこちらに向け、熱っぽい瞳で見つめてくる。

 そんなことを言われ、そんな目で見つめられたら、

「あァぁァぁぁっッ!」

 流石の俺も……我慢出来んかった。
 体温が一気に上昇するのを感じ、俺は光の後孔目掛けて自分のモンぶち込んだ。
 光のナカから指抜いて、ベルトに手ぇかけた時、光は安心したように目ぇ細めて。ホンマに欲しかったんやなぁと思た。

「光……それは反則やろ……っ」

 あんま慣らさんかったからちゃんと入るかな思たけど、光のそこは俺のをあっさり呑み込んだ。
 奥まで突いて、俺は光のエエとこを探す。

「あァぁっ! そこ……っ」
「ん?」
「そこぉ……っ、気持ちぃっ、ええ……っ!」

 せやけどもう数え切れんぐらい身体重ねとるから、簡単に光のエエとこは見つかった。
 光は甲高い声上げて、背中をのけ反らせる。
 俺がしてんねんけど、ガクガクと揺れる光の身体を後ろから抱き締め、シャツん中に手ぇ入れて乳首弄ったった。

「はぁァんっ、えぇ……っ! めっちゃ気持ちえぇ……っ!」

 そしたらより一層喘いで。
 腰を動かして光のエエとこを重点的に突き、乳首を捏ねくり回した。

 突いてる内に俺も気持ちようなってきて、熱が増すんを感じる。おまけにトイレやから音が反響して聞こえて、俺らの興奮を煽った。

「アぁっ! あっ、もっ、もぅ……アカンっ!」
「……っ!」

 光が限界訴えんのはめっちゃはようて、俺は強い締め付けに耐え切れんとイってしもた。
 ドクドクと光んナカに欲を注ぎ込む俺とは対象的に、光のモンは張り詰めたままで……まだイってへんかった。

「またかいな光……」

 淫魔やからかも知れんけど、光はドライエクスタシーが出来た。
 前立腺を刺激して、精液を吐き出さんと絶頂に達することが出来る。女がイく時に似とるみたいで、イった後も快感が持続して気持ちええらしい。
 俺には分からんけど……。

「自分……どんだけ淫乱やねん」

 まぁこれはやりとうてもそう出来るモンでもないみたいで。よっぽどの淫乱やないと無理やろ。

「ふぁァっ、アぁあァ……っ」

 光は完璧に熱に浮かされとって、俺の声なんか聞こえてへんみたいやった。
 俺はふぅと一息吐くと、光に構わず、小刻みな収縮によって勃ち上がり始めとる自身で律動を再開させた。
 グチュグチュと俺が注いだ精液が掻き交ぜられて、卑猥な音を立てる。

「あっ、ヤぁっ、はぁっ!」

 身体を跳ねさせ、引っ切りなしに光は声を上げた。その刺激で今度はホンマにイったらしく、精液を先端からボタボタ零しとる。

 淫魔で淫乱で、

「光……っ!」

 俺は……そんな光が愛しいて。
 我慢出来んで、無理矢理顔をこちらに向け、光の唇に自分のを重ねた。

 俺は……光が好きや。
 淫乱な光が可愛いて可愛いて、俺はいつの間にか好きになっとった。
 せやからこんなアホみたいなことを続けとる。

「光……好きや……っ、めっちゃ好き……っ!」

 唇を離して愛の言葉を囁けど、

「ふぁァぁァっッ! あぁぁアぁっ!」

 熱に浮かされとる光は……聞こえんフリしとって。
 絶対光から『好き』て言わせたろう思て、俺はずっと待っとる。

 ――そんな自信はどこから来るて?

 そんなん、光の相手が俺しかおらんからに決まっとるやろ。
 淫魔やったら俺以外のヤツたぶらかすんも簡単やろに、光はそれをしようとせえへん。

 それはつまり……そういうことやろ?

 喘ぎ声はいくら人がおらんいうても学校のトイレで激しく上げる癖に、好きの一言も言えんなんて……めっちゃ可愛ええ。

「好きやで光……っ」

 好きと囁き続ければ、赤い耳がより赤くなったような気ぃして。

 ――淫魔が俺に堕ちるんも、後少しやなと思た。



end.


白石の勘違いだったらかなり痛い話ですよね……。でもそんなことはないです。光は白石のことが最初から好きで、だから白石を誘ったという裏設定つきです。
淫魔のことはこれを書くにあたって調べました。ドライエクスタシーに関してはとあるモノを調べたら出てきまして。淫魔ならあり得るんじゃないかなということで入れてみました。

麗嘉様、素敵なフリリクありがとうございます!


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