12

「あっ、あっ、アっ」

 謙也の突きに、アホみたいに喘ぐ俺。
 想像しただけで分かる。
 今の俺の姿はきっと滑稽で、惨めなモンに違いない。

「愛してるぅ……白石ぃ……っ!」
「ひゃっ、あッ、アんっ」

 快楽の渦に引き込まれながらも、俺の頭は妙に冷静で……俺を犯している、『親友』のことを考えた。

 俺は……謙也のことをずっと親友やと思てた。
 友香里の恋人として再会した時も、離れとった距離なんか全然関係なくて、昔みたいに喋れて嬉しかった。
 中学ん時も、唯一俺が本音を話せた相手で、もちろんレギュラーメンバーの助けもあったからやけど、謙也なしでテニス部の部長はつとまらんかったやろう。

 でも謙也は……俺のことがずっと好きやったって言うた。
 それはつまり、俺のことを恋愛対象として謙也はずっと見てたってことやないか。
 ――裏切られた。

 謙也の行動全てが、今までの優しさ全てが、嘘みたいに見えてきた。
 謙也の優しさに嘘はなかったとは思う。

 けど、頭がついていかへん。
 謙也は俺のことが好きやから優しくしてくれてただけで、それは決して『友達』やからって訳やなかった。

 頭ん中がぐちゃぐちゃで、なんやもう何がショックなんかは具体的には分からんけど……とにかく俺はショックやった。
 裏切られたって、感じる。

 それはやっぱり友香里のことが一番の原因やけど、俺が謙也と過ごした中学時代全てが、否定されてるような気ぃして……ごっつい嫌やった。

「ひっ、はァっ、ちょぉ……っ」

 そんな俺の冷めた頭とは正反対に、高められていく熱。
 謙也はガツガツ俺の中を突きながら、すっかり勃ち上がった俺のモンを指で擦り始めて。出せと言わんばかりに刺激を与えてくる。

「けん、やぁ……っ、ホンマに、やめてや……っ」

 くちゅくちゅと溢れ出る我慢汁。
 パンパンに勃起した自身。

 限界が――近い。

 さっきイかされたばっかりや言うのに、どんだけ感度ええねん俺の身体。
 やめてて言うたところで、謙也がその手を止めてくれる訳ないのに、俺は言わずにはおれんかった。

「ひやぁっ、あぁっ……、あぁアんっ」

 気を抜いたら飛び出してまいそうな、射精感を必死に堪える。

「しらいしっ、えぇよっ、しらいしの精液出してぇやっ」
「嫌、やぁ……っ」

 なっさけない声。

 だんだん悲しなってきて、生理的な涙やなくて、俺の目からは別の種類の涙が溢れ出てきた。

「我慢せんでもえぇよ。出して……出してや白石っ」
「あぁ……っ」

 えぐるように先端に爪を立てられて、

「あ、あぁぁァア……っ!」

 俺は呆気なくイってしもた。
 背中が弓なりのように反り返り、白濁を吐き出す。俺と謙也の腹に精液が付着し、俺ははぁはぁと荒い息を吐いた。

 その反動で自然と力が入って、俺の穴はキュッと締まり、謙也は、

「は……っ」

 おかしな声を上げて、俺のナカに熱いモノを吐き出した。
 腹の中に広がっていく熱い液体。

 ――あぁ……コイツ、ナカ出ししよった……。

 そんなことを思いながら、俺はぼんやり謙也を見つめる。

「白石……しらいし……っ」

 繋がりはそのままに。
 汗ばんだ俺の頬を撫でながら、謙也は何度も俺の名を呼ぶ。
 まるで……俺の存在を確かめるように。
「白石、愛してる……白石、しらいしぃ…好きや…」
「……」

 謙也の、愛の囁きを聞きながら、俺の意識は遠のいていった。







 ――まどろむ意識の中俺は、幻なのか現実なのか……

 泣いている謙也の姿を見た。



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