11
 じゅるりとやらしい水音を立て、謙也は俺の先走りを飲み込む。

 そんなん、絶対おいしいワケないのに……。付き合ってた女やって、まずい言うて苦笑い浮かべとったのに。
 それやのに謙也は、心底美味そうに俺のをしゃぶっとる。

「謙也……ホンマにやめ、てぇや……」

 感じたないのに。
 謙也の……『友達やと思てた』男のフェラなんかに感じたないのに、俺のモノは、

「ホンマ白石は、素直やないな」

 大きなってく。

 生理的な現象に、逆らわれへん。
 与えられる快感に、俺の体は素直な反応を示した。

「ひぁ……ぁっ、やめ……っ」

 女やないのに、鼻から抜ける喘ぎみたいな声が漏れて、羞恥で頭がおかしなってまいそうやった。
 ジタバタと動いてた足も、快感で思うように力が入らんようなって、俺は謙也に完全に捩じ伏せられてしもた。

「あぁ……っ、けん……、イく……イくからぁ……口、離し、てやっ!」

 俺の願い虚しく、それどころか謙也は出せと言わんばかりに吸い上げてきて、

「あぁ……っ」

 変な声出して、俺はイった。
 イった衝撃で俺の体はピクピクと痙攣を起こす。

「白石たまっとったん? めっちゃ濃いで」
「……っ!」

 謙也は……俺のをゴクリと飲み込んで、口の端から垂れた分までご丁寧に舐めとった。
 俺の精液まで……飲みよった。
 行き過ぎた謙也の行動に、俺はショックを隠しきられへん。

「けど、安心してや。これからは俺が、白石の相手したるから……」

 謙也はベッドサイドに手ぇ伸ばして、『あるモノ』を手に取った。それは間違いなくローションで。何に使おうとしてんのか、一発で分かってしもた。

「ちょっと冷たいけど、我慢してな」

 『イレル』とするなら……男の穴はあそこしかない。
 力が思うように入らんで、俺が抵抗せんのをええことに謙也は俺の脚を大きく開くと、

「や……っ」

 指にたっぷりローションをたらして、俺のケツの穴に突っ込んできた。

「い゛たいっ! 謙也、やめて……っ」

 そこは出す為の場所や。俺のそこは、謙也の指を完全に拒絶してた。それでも謙也は俺のナカに突っ込んでくるから、痛うてしゃあない。
 ローションの滑りをつこて、謙也の指は俺のナカにどんどん入ってきた。

 こんなんおかしい。絶対おかしい。

「もうちょっとで気持ちようなれるから」

 そんなことあるワケない。

 こんな……こんなに痛いのに……っ

「どこやろな……この辺やと思うんやけど…」

 そう言うて謙也は、何かを探すみたいにナカに突っ込んでた指を掻き回した。ナカを動き回る指は俺にとって苦痛でしかない。

 はよ、やめてほしい。

 せやけど、

「あぁぁっ!」

 ある一点を掠めた瞬間、電気が走ったみたいな感覚が全身を駆け巡った。
 喘ぎみたいな変な声も、思わず口から出てまう。

「見つけた」

 大人のクセに。
 欲しいモノが手に入って、目を輝かせた子どもみたいな顔して、謙也は嬉しそうにしとる。

「白石、気持ちええんやろ? ココ」
「んぁっ!」

 謙也がそこを刺激する度に、俺の体は跳ねた。イって萎えとった自身が、勃起し始めんのを感じる。

「いやぁっ、あっ、アっ」

 声が漏れんのを抑えきられへん。

 気持ちえぇ……っ。
 何や……何やコレ……。

「ココな、前立腺いうて男が感じるトコやねんて」
「はぁっ、アぁっ、ヤぁ……っ!」
「白石のその様子からみて、どうやらホンマやったらしいな」

 謙也は指の数を一本から二本、二本から三本と増やしてって、前立腺とやらを執拗に刺激する。

「けんっ! やぁ……っ、ふぁっ、ひヤぁっ!」

 さっきから喘ぎっぱなしやから、口は開きっぱなしで、流れるよだれを止めることは出来ひん。

「感度えぇなぁ」
「ほんっ、……まっに、やめてぇやっ! あっ!」

 ようやく口に出来た言葉も、謙也はニヤリと笑っただけで受け流された。ローションが内璧に擦り合わされて、グチュグチュと音を立てる。
 しばらくそれが続いて、頭おかしくなる思た時、

「ぁ……っ!」

 謙也の指がナカから出ていって。
 代わりに、

「ようやく白石と一つになれる……」

 熱いモノが――押し当てられた。

 ガシリと膝裏を押さえつけられ、より大きく俺の脚は広げられる。

 『それ』の正体がなんなんか、俺はすぐ察しがついた。

 やめてと叫ぶ暇もなく、

「あ゛あぁあぁぁっ!」

 謙也のモンが――ナカに入ってきた。

 指なんかとは比べモンにならへん。

 比べモンにならへん質量に、俺は目の前がチカチカすんのを感じた。圧迫感が苦しい。このままいっそ、あまりの痛みに意識が飛んでた方が楽やったかも知れん。

 せやけどそうはいかんで、俺の意識は保たれたまま。
 俺がこんだけ苦しんでんのに、謙也のヤツははぁはぁしながら、やっぱり嬉しそうにしとる。

 なんとかっちゅーか、謙也は強引に腰を進めてきよって、

「謙也ぁ、頼むから抜いてぇや……っ!」

 必死に頼んだ。

 当然謙也に聞きいれてもらえるワケなんかなくて、ゆっくりと、確実に、それは奥に入ってくる。拒みたいけど、俺の脚は謙也に完全に固定されとるから、ちょっとやそっとや動かへん。
 それに、俺は謙也を――。

「ふぅ……やっと入った」

 一段落、といった感じに息吐くと、謙也は指で『繋ぎ目』を嬉しそうになぞった。
 ――そう。信じたないけど俺のナカに、謙也のモンがしっかり収まっとる。穴を締めようとすれば、しっかりと感じる熱い塊。それが謙也のチンコやなんて想像もしたないけど、謙也の股の間から生えとるから間違いない。

「白石のナカ、気持ちえぇ……っ」

 うっとりしたように、謙也は呟く。
 そのまま、ゆっくりと腰を動かし始めた。

「……あっ、アっ、あッ」

 謙也はガツガツ奥をついてくる。
 指で探り当てた俺のえぇトコを、容赦なく突いてきた。


「やっぱ、ちゃうなっ。ただの、『処理』する為だけに使てた女とは、全然、感じ方が、ちゃうわっ」

 ただの『処理』。
 その中に……友香里も含まれとんのやろか? 謙也の、ただの性欲処理だけの為に、友香里は利用されたんやろか?

 謙也に抱かれながら、俺は自分自身に問い掛ける。せやけど答えなんか出るワケなくて、俺は滲む視界の中、謙也を見つめた。

「あっ、けんっ、やぁっ、やぁっ、はぁンっ、やめっ……てぇやっ!」

 謙也は俺の足を腹につくぐらい折り曲げ、挿入をより深くする。性交特有のパンパンと、肌がぶつかり合う音が響き合った。
 女とヤる時は俺が立てる音や。
 その音を立ててんのは俺やなくて、謙也。
 俺を今、犯しとる男。

「あっ、やっ、あぁんっ」
「白石っ、めっちゃ好きっ」

 俺に好きや好きやと囁きながら、謙也は顔を近付けてきて、ペろりと頬を舐めた。

「好きや白石っ、愛してるっ!」

 激しさを増す謙也の腰の動き。

「あっ、あッ、アっ」

 それと共に、激しさを増す俺の喘ぎ。
 どけだけがっついてんねんて感じやけど、ギシギシとベッドのスプリングが音を立てる。

 こんな強い力で、俺は女を抱いたことない。

 こんな風に、相手を求めたことない。

 こんな……

 こんな……

 愛おしそうな目で、相手を見たことない。

 ガクガクと体を揺さぶられながら、俺は謙也の俺に対する『愛』を感じた。
 せやけどこんな『愛』、俺はいらへん。願い下げな、迷惑な、押し付けがましい愛情や。

 それにこの男は、友香里を裏切った。
 大切な俺の妹の心を、踏みにじりよったんや。そんなん……許せるワケない。

 それでも俺は、謙也を本気で蹴れんかった。こんな強姦みたいな真似されて、俺は謙也を蹴り飛ばしてもよかった。『本気』で、蹴り飛ばすことも出来た。
 俺がそうせぇへんかった理由は、やっぱり謙也のことを親友やと思てたからや。親友を、本気で蹴るなんて真似、俺には出来ひんかった。

 その甘さが、今この事態を引き起こしてる。
 謙也に好き勝手にされてる。
 まぁどのみち、腕に手錠がつけられとる時点でヤられんのは避けられへんことやったけどな。

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