実験

 言うならばそれは、些細な好奇心が生み出した些細な『実験』やった。

 この前ネットで色々調べとったら、なんやエロいキーワードで検索かけたなってしもて。
 ――べ、別に飢えてるとかそんなんやなくて、俺には白石っちゅー恋人がおって、アッチの方のお世話もしてもらっとる訳やねんけど……そう、言うてみるなら好奇心や。
 もしくは思春期特有の悪い癖が俺を駆り立てた。

 そんで、色々見て回っとる内に辿り着いたんが……いわゆるSMプレイと呼ばれるモン。
 動画の方もあって、俺ははーとか、ほーとか関心しながら、興味津々にそれを見た。
 内容はいたって普通……ちゅーか、SMやったらこんな感じかって思うレベル。
 深夜の病院でっちゅーのがシチュエーションみたいで、男は白衣、女はナースを着てて、コスプレプレイも入っとった。
 男に包帯で両腕を縛られた女が、今度は目隠しされて。そしたら『いつもより感じてる?』とか色々言葉責めされて、尻をぶたれて、いっぱいあんあん喘がせられるって話。単純。ありきたりやな。

 でも俺は動画を見ながら思た。

 ――あれ、そういえば白石て……。

 それを見ながら、俺はふと思てしもたんや。

 白石て……Mなんやないかって。

 やって、意地悪く囁いたらナカはキュッて締まるし、歯を立てたり痛くしたら逆に身体は敏感に反応しよるし、激しく乱暴に突いたった方がよう喘いどるし……もしかしたら、白石自身気づいてないかもしれんけど、実はめちゃくちゃMなんとちゃうかって思た。

 とにかく動画内のM設定の女と、重なるとこがめちゃくちゃあった。
 まぁ俺にそう強く思わせたんは、何もMなところだけやのうて、女に包帯が巻かれてたんも原因かもしれんなぁ……。ただでさえ俺の中で白石イコール包帯みたいな方程式立っとるし。

 そん時はなんも感じへんかったけど、そう思てしたから……俺はつい、実行に移してしもた。

 好奇心から始まった、『実験』という名の淫行が、この日現実になった。






 くるくるくる。

「――……ナニコレ?」
「んー?」

 不審がってたけど、俺はええからええからてごまかしながら白石の包帯を解いて、金のガントレットを外して床にそっと置いて。
 それを白石の両手首を縛る為に、俺はくるくる巻きつけて強く結んだ。固結びにしたから簡単には解かれへんやろ。

 白石の包帯を見てたら。いや、白石を見てたら。
 なんやこの前の動画を思い出してしもて、つい体が動いてしもた。

 ――今日は部活もなく、なーんも予定のない土曜日。
 白石を俺ん家に誘た。

 家族はおらんて来る時に言うといたから、白石もヤるってことは分かってて俺ん家に来たんやろし。ヤること自体にはまぁ問題ないやろ。
 問題なんは受け入れてくれるかどうかやねんなー……。
 今は大人しくしてくれとるけど、白石が乗ってくれるかどうかは分からんし。白石が乗らんでも、一回イかせてフニャフニャしてまえば、なんとでもなるからな。要するに無理矢理ヤってまうってことや。

「アレやん。今日はちょっと趣向を変えてみようや」
「……それが縛りプレイ?」

 手首を俺の目線の高さに合わせるぐらいに上げて、白石は胡散臭そうな目を俺に向ける。

 それもあるけどな。
 ホンマにやりたいんはもっと酷いことやけど。

「うん。そうそう」

 流してしまえばこっちのモンや。
 ベッドの上に胡座をかいて座ってた白石を押し倒して、俺はニヤリと笑う。
 白石も白石で乗ってきたんか、ニヤリと笑った。どうやら縛ること事態は許してくれたみたいや。

「ええよ。今日はSM風味でいこか」

 お、かなりノリノリやんか。
 実際そうなる可能性があるから、心構えがあんのは有り難い。
 口角が上がるのが嫌でも分かる。

「どうせやったら、目隠しもしてまおうや」

 白石が乗ってくれたとこで、調子こいた俺は隠し持ってた救急箱からパクってきた包帯で白石の両目を覆った。

「ちょお、謙也……っ」
「ええからええから」

 なんべんもなんべんも、怪我を処置する時みたいに包帯を巻いて、白石の視界を完璧に奪ってやった。

「謙也……なんも見えへんねんけど……」
「ええねんええねん。それで」
「……えらい本格的やな」

 せやねん。今日は本格的に攻めたんねん。

「その方がSMっぽいやん」

 嫌そうに聞こえたけど、白石からの抵抗はゼロで。暴れへんてことは……納得してくれたてことやんな?
 自分の、都合のええようにとった俺は、白石への行為を始めた。

 白石の頬に顔を近付け、ふっと息を吹き掛けただけで、ん……っとええ反応が返ってきて。俺はニヤニヤせずにはおられへん。

 舌を這わせねっとりと舐めあげれば、白石はくすぐったいって、何でもない風に言うたけど、白石の体はバッチリ反応しとった。

 感じやすい体やってことは確かやな。

 唇をどんどん下へ落としていき、鎖骨に辿りついたとこで、

「ん……っ」

 歯を立て、赤い痕を残した。

「あっ、ちょお。そんなとこに痕つけんなや……っ!」

 視界は奪われても感じる痛みから察したんか、白石からの叱責が飛ぶ。
 当然やけど白石のお咎めは無視。
 結んで縛った白石の両手首をベッドに左手で押さえ付けて、右手を使って俺は白石の服を剥ぎ取っていく。白石はそんな俺にため息をはいた。
 呆れられたてことは了承が得られたってことやから、俺は手を動かし、シャツの前を開いて下着をたくしあげて、白石の体を舐めまくる。へそ周りに脇腹、乳首には触れんと胸を重点的に。そしたらやっぱりもどかしいみたいで、白石は腰を振りはじめた。
 それに、

「あぁ……っ、ん……っ」

 いつもやったらこれぐらいちょっと腰を揺らす程度の刺激やのに、白石の息は既に上がってきとる。
 視界を奪われたことで、いつもより感じてるみたいやな。無意識なんか、刺激に耐えるかなように足のつま先もシーツを引っ掻いとるし。

「白石……どないしたん? いつもより感じとるやん。そないにええの?」

 そう指摘したったら、白石はちゃ……ちゃうわアホ……っと首を振った。

 俺はそれに、ふーんてなんでもないみたいに返したけど、内心余裕こいてられんのも今のうちやけどなと呟いた。

 俺の焦らしプレイは続いた。

 乳首は弄ってもらいたさそうに突き出とるけど、まだ触ったらへん。代わりに、その周りを指先で円を描くようになぞってやった。
 弱い刺激ばかりで、白石のもどかしさは増すばかりやろう。

 脇腹を指先でつつーっとなぞれば、白石の腰が大袈裟に跳ねた。

「……嘘はアカンで白石。腰揺れとるやん」

 白石の耳元で、息を吹き掛けるように喋れば、白石は小さく声を漏らす。

「か、感じてなんか……っ」

 無理してもて……めっちゃ感じとるわ白石。

 膨らみつつある白石の股間。
 それを目にして、俺は白石のズボンを引き下ろした。足から引き抜いて、ベッドの下に放り投げる。
 下着は身につけたまんまやけど、白石の白い足がベッドに投げ出された。

「あれー? おっかしいなぁ。白石感じてない言うてたのに、白石のちんこ、なんや大きなってんで?」

 わざと意地悪な言葉を浴びせ、白石のモノを指先で少し触れてやれば、おもしろいぐらいにそこはビクビクと反応した。
 白石の顔が赤く染まる。

「け、謙也……っ! 今日のお前なんか――」
「変……か? せやから言うたやんか。今日はSMっぽくいくて」
「そっ、それは……」

 おっ、白石のヤツ戸惑っとる。
 自分がMやってこと自覚したんかなぁ……。
 戸惑う白石なんか、セックスん時ぐらいしか拝まれへんわ。

「白石かて了承してくれたやん」






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