「ステキだよ……っ、ステキだよ白石くん……っ」

 苦しむ俺の姿をオカズにしとんのか、ぐちゅぐちゅとストーカーは自らのモンを扱いとるようで。

「あぁ……っ」

 鼻から抜けるような気持ち悪い声出して、今度は声を上げ続ける俺の顔に、ビチャッと精液を掛けてきた。
 少し口ん中に入ってきて、味とかそれ以前に気持ち悪うて、吐いてしまいそうになった。

 気持ち悪いけど、俺はそれどころやない。

 下半身に広がる痛みはどんどん酷なって、激痛みのせいで、ホンマに気を失いそうになった。

 ストーカーはそれを分かってたみたいに、

「あぁ……もう、我慢出来ないよ……っ」

 焦れた声出して、ぎこちない手つきで俺を戒めていた紐を外した。
 飛びかけとった意識が一気に覚醒する。

「あ……、アぁっ」

 塞ぎ止められていた熱は止まることを知らんで、俺は精液を吐き続ける。全身から力が抜け、ストーカーによってつかされた膝がガクガク震える。
 俺の体は痙攣を繰り返し、膝立ちしてられんで、ペタリとベットの上にへたり込んだ。

 ……ストーカーの方我慢が利かんようになったらしい。

「あ……っ」

 俺のナカを暴れ回っとったバイブが抜き取られて、ストーカーに腰を掴まれ、変わりに……ビクビクと脈打つ熱い何かが押し宛てられた。

 これまでの流れを振り返ったら、それは予想出来る当然のことやった。

 せやけど……実際そこまできてしもたら、

「ややぁ……」

 拒絶の言葉しか、

「嫌や、嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌やぁっ!」

 出てこんかった。

 殺されるかもしれんのに俺はそれだけは許せんくて、だるい体を必死に動かし抵抗した。

「ハハッ、そんなに喜ばなくてもいいんだよ……っ!」
「嫌やぁっ、嫌やっ!」

 でもそんな抵抗ムダで。ストーカーにがっちり腰を掴まれたまま。
 もう……アカン。

「白石くんと、僕が……ついにひとつに……っ」
「嫌やぁぁァっ!」

 俺の悲鳴染みた声と重なって、うっとりしたしたようにストーカーは呟き、腰を押し進めようとした――その時、

「白石っ!」

 幻聴……やろか?
 謙也が俺を呼ぶ声が聞こえて、バタバタと足音が響き室内が騒がしくなった。

「部長っ!」
「蔵リンっ!」

 謙也だけやない。
 みんなの声がする。

「なんなんだキミ達は……っ!?」

 うろたえるストーカーの声。

「おま……っ、白石に何してんねんっ!」

 後孔に押し宛てられとったストーカー自身の感触がなくなって、代わりに何かが落ちるみたいなドンって派手な音が聞こえた。シーツが引っ張られる。

「白石に……っ、白石によくもこんなこと……っ!」

 鼻声になった謙也の声と断続的な渇いた音と、

「ぐば……っ」

 ストーカーの……苦しむ声が聞こえた。

「君、止めなさいっ!」
「せやけどコイツが白石を……っ!」
「気持ちは分かるが君が殴っていいという道理はないだろうっ!?」

 ――これは……一体なんや?

「白石……辛かったなぁ……っ」

 俺を労るような……健二郎の優しい声。

「手枷の鍵、コレやろか?」
「多分そうっすわ」

 ユウジと財前のそんなやり取りが耳に入って、カチャカチャと手枷が音を立てる。
 足の方も同様に音がして……俺を拘束していたものが何故か外れた。

「白石はん……」

 辛そうに俺を呼ぶ銀の声がして、あったかい手が伸びてきて俯せやった体を起こされ、ベットの上に座らされる。

 そして、

「蔵リン、今外してあげるからね……」

 小春の声がして俺の視界を奪っていた布に手が掛けられた時、俺はこれが幻聴なんかやないってことを理解する。
 ハラリと俺の視界を奪っていたものが取れ、涙で滲んどったけど、馴染んだみんなの顔がそこにあった。

「白石っ!」

 警官らしき人物に取り押さえられとった謙也が、そん人の腕振りほどいて俺に近付いて、

「け……」
「大丈夫……もう大丈夫やからな白石ぃ……っ」

 俺が言葉を発するより先に、謙也が抱きしめてきて。震える声でそう口し、俺は……何も言えんようになった。
 謙也は服が汚れんのも構わんで、精液やら体液で濡れた俺を、強く……強く抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫やから……っ」

 肌に感じる、謙也の体温はひどく心地よくて、その温かさが俺の心を溶かし、張り詰めていた緊張が、

「し、白石……?」

 一気に……解けた。
 皺が寄るのも気にしてられんで、俺は縋り付くように謙也の背中を掻き抱き、

「うぅ……うわぁぁぁっ!」

 声を上げて泣き叫んだ。
 謙也は黙って俺のことを抱きしめ続け、よう堪えたなと言いたげに、優しく頭を撫でてきた。
 なんでか分からんけど、謙也の体温も、声も、その手も全てが、俺を落ち着かせた。

 ――そんで、

 裸の俺に自分の学ランかけてくれた健二郎や、

 ストーカーが警官に連れていかれる際、止めるのも利かんでストーカーの顔面を蹴ってくれた財前や、

 門のとこに落ちてた俺の鞄を持ってきてくれたユウジや、

 汚れた体を綺麗に拭いてくれ、ジャージに着替えんのを手伝ってくれた小春や、

 精神状態を考え病院に搬送が決まった俺を、体支えてパトカーまで運んでくれた銀……

 みんなが……みんながおってくれたから、俺はまともでおれた。









 ――みんながあの場におった理由は、俺が病院に運ばれて三日後、見舞いに来てくれた時に聞いた。

 ストーカーに襲われた次の日、あの日はとてもやないけど会える状態やなくて……せっかくきてくれたのに、俺に付きっ切りやった母さんに頼んで、帰るよう言うてもろた。みんな、心配してきてくれたのに……ホンマ申し訳ないことした思う。
 警察の人もきてくれたみたいやけど、その日は誰にも会いたなくて、そのさらに翌日、ストーカーのことについて聞きにやってきてくれた時俺は全部話した。
 溜め込んできたモンを全部話せて、俺はスッキリした。変な意地張らんと、さっさと警察に相談してたら、こんなことにはならんかったんかな。謂わばこれは、俺が招いた結果や。唯一心が痛んだこというたら……母さんが泣いてたことやった。

 そんで三日後、俺はみんなに会った。
 俺が聞いたら、全員気ぃ遣ってんか話すのを躊躇うような態度とったけど、俺が話してて促したら、話してくれた。

 なかなかやって来おへん俺を、いらちで待つのが嫌いな謙也が焦れたらしい。
 あまりに健也が騒ぐから迎えに行こうてことになって、せやけどすれ違いになったらアカンから、じゃんけんに負けたユウジが謙也に付き添って学校に戻ろうとした時、校門とこで車に乗せられ連れ去られていく俺を見かけて。謙也は必死に追いかけてくれたみたいやけど車に追いつけるワケないから、一緒におったユウジが車のナンバーメモったそうや。つまり気を失う前、俺が聞いた謙也の声は幻聴やなかったんやな。
 そんで慌てて謙也とユウジが、コンビニに残っとるみんなに知らせて……いきなり警察呼んでも、こどものいたずらやと信じてもらえんかもしれんから、小春の機転で近所の交番からお巡りさん引っ張ってこよと考えたらしい。
 それは見事正解で、そん人がすぐに信用してくれたってのが一番やけど、警察署に連絡入れてくれて、車のナンバーで持ち主と住んでるとこが一発で分かった。
 お巡りさんはみんなに帰れ言うたけど、俺のことが心配やから無理言ってついてきた……っちゅーのが、だいたいの話の流れやった。

 昨日言えんかったから、俺がありがとう言うたら、みんな笑顔見せてくれて、俺も自然と笑えた。

 その後は学校であった謙也のアホな話とか、小春のええ男談義とか、それに対するユウジの嫉妬とか……他愛のない話で盛り上げて、俺を元気づけようとしてくれんのは嫌でも分かった。

 確かに昨日のことは辛い。

 唯一救えること言えばストーカーの顔を見ずに済んだってことやけど、思い出しただけで吐き気がする。昨日も……なかなか寝られへんかった。

 せやけど、俺にはこんなに素晴らしい仲間がおる。
 辛いことも、一緒に乗り越えてくれる仲間がおる。

 大丈夫……言うんは嘘になるかもしれんけど、多分、これから大丈夫になれる。

 みんなが支えてくれるから……

 俺は前に、進める気がした。




end.



な、長い……今までのどの話よりも長いです。
優良様、お待たせしました!
せっかくのリクエストでしたのに、ぐだぐだ感マックスですいません……なにかございましたらメールか拍手でお願いします!

で……このお話なんですが、白石があまりにかわいそうになって、しかもまにあっく行きを思わす内容になったので……かなり削除をし、書き直しました。時間がかかったのはそのせいです。お待たせしてしまってすいません!それでも酷い内容ですね……
そして最後の最後まで私を悩ませたのが、ラストでした。普通の人の心情を考えて、犯された後に知っている人がやってきて……平常心でいられるでしょうか?なので、白石が荒れるルートも考えました。最初はそっちの方で考えてて、そっちでいく予定だったんですが、やっぱり白石がかわいそうで……私には無理でした。ごみ箱部屋ができたあかつきには、こっそりあげようと思ってます。

なんやかんやで打ってて楽しかったです!
ちなみに謙也くんは白石のことが好きだったりするんですね。その辺も踏まえて、続編が書けたらな……と思ってます。


追記
書き加えました! あまり変わってない気もしますが……

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