もっと激しく。
「――あァ…っ、ヤぁっ、…アァんっ!」
未だに、鼻から抜ける、女みたいに高いこの声は慣れない。最初の頃は恥ずかしくて、唇を噛み締めて我慢したものだけど、最近ではもう、どうでもよくなっていた。
与えられる快感に、素直に反応する。その方が楽だし、純粋に気持ちよかった。
「……なんやの白石、最近声激しない?」
上から降り注ぐ、熱っぽく吐かれた謙也の言葉は俺の羞恥を煽るものだったが、熱に浮かされた頭に効き目はない。
「はァ……けん、やぁ……っ、アぁっ」
謙也は俺の両足を大きく広げて膝裏を持ち、身体につくぐらい押し付けて。俺の身体をきっちり固定して、ナカに埋めたモノでガンガン奥を突いてくる。
息吐く間もなく刺激を与えられ、俺は気持ち良すぎて、意識が飛ばないようにするのに必死だ。シーツを力一杯掴み、自分を保とうとする。
生理的に流れた、涙に濡れた瞳で謙也を見ると、切羽詰まったような彼の瞳にぶつかって。
謙也も、俺と同じように感じてくれている――そう思うと、堪らなく嬉しくなった。
「謙也ぁ……っ、はァんっ、アぁ…っ」
快感に震える手を伸ばせば、謙也は分かってくれたのか、優しげに微笑み、姿勢を低くしてくれた。俺は謙也の背中に手を回し、しっかり掴む。
「蔵……めっちゃかわいい」
普段、呼んでくれない下の名前。
二人きりの時だけ、『けじめ』をつけるみたいに呼んでくれる。
「けんやぁ……もっと、ぁアっ…もっ…はァ…っ」
――謙也がもっと欲しい。
そう言いたいのに、喘ぎ声が邪魔して最後まで言えない。
「蔵、なんて? もっかいゆうてみて?」
「けん、やがァ……アぁっ、もっと欲しぃ……っ」
謙也に催促され、とぎれとぎれだがもう一度口にした。今の俺に『恥ずかしい』なんて言葉は存在しない。謙也には俺の全てを見せた。いまさら恥じらう必要など、どこにもない。
「そんなこと言うて……蔵はホンマ淫乱やなぁ…」
「はァン……やァ…っ、もっ、とぉ俺んこ、とぉ……めちゃ…あぁンっ!」
言い終わるより先に激しく奥を突かれ、言葉は喘ぎに変わった。
俺の要求通り、激しくなった謙也の動き。
純粋にただ、気持ちいい……
イイところを重点的に攻められ、俺は限界が近いことを悟った。
「アぁ……もぉ、あ、かんっ、……イきそ……っ」
「ほならイこか…」
今までで一番強い突き上げに、俺は為す術もなく、
「あァぁぁァーーっ」
激しい声をあげてイってしまった。白濁が俺と謙也の腹にかかる。
その時後孔を締めつけてしまい、謙也がナカに出したのが分かった。生温かい感触がナカで広がっていく。
荒い息を吐きながら謙也は膝裏に入れていた手を離し、俺の顔を挟むようにして肘をついた。
俺の真上にある謙也の顔。
愛おしそうに俺を見つめるその瞳に、俺は笑顔を向けて返した。
しばらく見つめ合って、息が落ち着いた頃俺は口にする。
「謙也……めちゃ気持ちよかった……」
「…そないゆうてもろたら、安心するわ」
スッと謙也の手が伸びてき、汗ばんで張り付いた俺の前髪を払った。そのまま頬を撫でられ、謙也との距離がゼロになる。
――触れるだけの優しいキス。
俺は回していた腕に力を込め、唇が離されると謙也をこう誘った。
「……もっかいシよ?」
end.