もとめて




 ――今までに何回も、謙也とセックスしてきた。

 比べる相手がおらんから分からんけど、謙也のテクはなかなかのモンで、事に及んだら俺は鳴かされてばっかりや。

 行為『事態』には満足しとる。

 せやけど……その行為に入るまでが問題やった。

 本人は認めてへんけど、謙也は周りが認知してる通りヘタレやから、セックスん時も俺が何らかの形で後押ししな始まらへん。
 後一歩が踏み出せんのや。
 顔には『シたい』て書いてる癖に、絶対言うてこうへん。謙也がシたい時はだいたい俺もそうで……我慢出来んで俺がふっかけたら事は始まる。

 謙也はヘタレ以前に優しいから、俺に気遣ってくれてんの分かるんやけど……たまには、我慢出来んでいきなり押し倒されるとかされたい。

 ――まぁ、それは所詮俺の夢で。

 このヘタレにはそんな度胸ないから、多分無理やろなぁ……。よっぽどのことがない限り、俺のリードなしにヤるんは無理な気ぃする。

 せやけどそれが謙也のええとこでもあるから、俺はなんとも言われへんかった。

 これで気持ちようなかったたら最悪やけど、別に嫌や言うワケちゃうし。

 俺らにはこの関係が、お似合いなんかもしれへん――



 そう思い始めた、矢先のことやった。



「け、謙也……?」

 俺には今の状況がよう分からんで、目の前におる謙也を、ただ見つめた。
 間近にある謙也の顔。
 これまでに、何回も見てきたから分かる。その顔は多分……いや、間違いない。

 ――完璧に発情しとった。

 俺は今、二人きりの部室で謙也に押し倒されとる。

 なんでこないなったんかいまいち分からんで……俺は少し記憶を辿ってみた。

 今日の分の練習が終わって、いつも通りユニフォームのまんま部室で活動記録つけとったら、謙也がトイレ行ってくる言うて。
 付き合い始めてからいうもの、謙也は何をするでもなく、俺のこと待ってくれていつも一緒に帰っとる。せやから今日も待ってくれてたんやけど、唯一ちゃうとこ言うたらここやった。
 なんや顔色ようなかったから、腹でも壊したんかなてそんな風に思てた。財前からもろたスポーツドリンク、がぶ飲みしとったし。
 俺の読みは当たったたんか、謙也は中々帰ってこんかった。その間に俺は活動記録もつけ終わって、ユニフォーム脱いで着替え始めた。
 そんでちょうど、制服であるポロシャツを羽織った時やったと思う。
 事が済んだんか、謙也が帰ってきた。
 俺は心配して「大丈夫なんか?」て聞いたのに、謙也は何も答えんとそのまま俺に近付いてきて……噛み付くようなキスをされた。
 訳が分からんで、されるままに謙也からのキス受け入れてると、ぬるりと舌が入り込んできて俺の咥内を動き回る。押しのけようにもいつの間にか謙也に抱きしめられとって、身動きが取られへん。

 え……なんやコレ……

 俺の中で有り得へんと思ってたことが起こっとるから、頭が着いていかれへんかった。

 唾液の糸を引きながら、謙也の口が離れた思たら、今度はゆっくり押し倒されて……今に至る。

 思い返してみても訳が分からん。

 だって……あのヘタレがやで?
 無理や思てたことが現実になって、ホンマ訳分からん。

「ど……どないしたん謙也?」

 酸素が少しでも欲しいて、荒い息を繰り返しながら俺は謙也に聞く。

 夢見てたことが――謙也に押し倒されて嬉しいはずやのに、戸惑いの方がデカくて喜ばれへん。

 謙也はなんも言わんと、焦ったように俺のベルトを外してスラックスを引き下げた。

 まさかて思たら俺の予想は的中で。

 謙也は俺の下着の中のモン取り出して、そのまま咥内に含んだ。

「えっ!? ちょお謙也っ!?」

 待ての意味を含めた俺の言葉は、謙也に分かってもらわれへんかったんか、それとも無視されたんか……謙也は俺のモノを咥えたままで、離そうとせえへん。

 謙也は俺の弱いところを重点的に攻め、俺を絶頂へと追い詰めていく。先走りが先端より溢れ、謙也の唾液と混じり合ってジュブジュブと卑猥な音を立てた。
 荒っぽい扱きに、俺はいつもより早く自身が硬くなるのを感じる。

「けんやぁ……ア、カンて……っ、俺ぇ……っ」

 自然と息が上がり、喘ぎ混じりになる自身の声。このままやと謙也の口に出してしまうから、口を離すように謙也の頭を掴むけど、思うように力入らへん。

 それやのに謙也は、出せと言わんばかりに吸い上げてきて……

「アカンっ、出るっ、俺もぉ……あっ、いやぁァあぁッっ!」

 俺は謙也の咥内でイってしもた。
 中々射精が止まらんで、ビクビクしながら謙也の咥内に精液を注ぎ込む。
 気持ちようてぼーっとする頭で謙也見とったら、口を離してゴクンて喉鳴らして。俺の精液呑んだんやなぁ……て、ぼんやり思た。

 ぐったりしとる俺の身体を謙也はひっくり返して四つん這いの状態にして。

「ぅあ……っ」

 俺のモンからまだ溢れとる精液を指で掬たら、ヌチュッて音立てて、謙也は俺のナカに指入れてきた。

「けん、やぁ……っ、いたい……っ」

 いつもなら俺の身体を労るように、優しくしてくれるのに、ナカを早急に解すような乱暴な指使いに、俺は痛いと訴える。

「……」

 俺が言うても、謙也は荒い息を繰り返すばっかりで……何も言ってくれへん。

「い……っ、ひやぁ…あぅ……っ」

 その内指が、一本、二本と増やされ、三本の指が俺のナカをバラバラに動き回る。裂けてはないみたいやけど、痛くて穴の回りがジンジンする。

 痛い筈やのに。痛くて優しくして欲しい筈やのに。
 ――乱暴に扱われて、俺はドキドキしとった。
 謙也に襲われたこと事態そうやけど、謙也の切羽詰まった表情とか、指使いとか……いつもとちゃうとこに、俺はいちいちドキドキしてまう。

 ナカを荒っぽく掻き回っとった指が俺のええとこ掠めて、

「ひやぁァン……っ」

 電気が走ったみたいな快感が、身体中を駆け巡った。
 痛みより快感の方が勝って。
 俺の口からは、よだれと甘ったるい喘ぎ声が引っ切りなしに漏れる。

「あ……っ」

 気持ちようてもっとそこを弄って欲しいのに、謙也は俺んナカから指を引き抜いて、思わず俺は残念そうな声を出してしもた。
 そんですぐ、カチャカチャとベルト外す金属音とズボンをずり下ろす音聞こえた思たら、謙也は俺の腰をしっかり掴んできて。
 後ろを振り向く暇すらなく、謙也の熱い塊が、

「あ゛ァあぁァぁッっ!」

 俺のナカを貫いた。
 いくらナカを弄られたとはいえ、あんまり慣らしとらんかったから、謙也のモンが入った瞬間、体が引き裂かれるんやないかてぐらいの衝撃が走った。
 ガクガクと体を揺さぶられ、謙也は硬くそそり立った自身で俺のナカを突いてくる。謙也のモノを迎え入れた内璧が、メリメリと音を立て、拡げられているような気さえした。

「はァん……っ、いやぁっ、あっ」

 自分の欲だけ晴らそうとしている、謙也の乱暴な扱いに俺は喘ぐことしか出来ひん。

「ごめん……ごめんなぁ……白石ぃ……っ」

 激しい出し入れを繰り返す内に、欲情しきった掠れた声で……謙也がようやく口を開いた。

「…ふぁっ、あっ、ひヤぁっ」
「白石、ごめん……っ、せやけど俺……足りひんねん……っ」
「あぁあァぁっ!」

 謙也のモノがギリギリまで引かれた思たら、一気に最奥を突いてきて、俺はあられもない声を上げた。その時に俺の前立腺を掠めて、痛みが快感にすり替わる。
 そこを突いて欲しいて、俺は謙也の先端に擦りつけるようにして腰を振っていた。イって、萎えていた自身が勃ち上がり始める。

「足りひん……白石が欲しいてたまらへん……っ!」
「はぁっ、やはァっ、ハァん……っ!」

 ――足りひん。
 謙也は譫言みたいにその言葉を繰り返す。
 これほど強く、謙也に求められたのはもちろん始めてで……俺は嬉しさで胸がいっぱいになる。
 考えもせえへんかったこと起こって、予想外やったけど、これは嬉しいハプニングやった。








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