…俺にこんな知り合いいたっけ?いやいやいや、俺が通う雷門高校にこんな女の子はいないはずだ。しかも一朗太…って。俺が不思議そうな顔をしているのを見かねてか、彼女が少しだけ眉間に皺をよせた。


「私だよ、ななし、近所に住んでた、幼なじみの…ってまさか、覚えてないの?」


まさか、まさか、あのななし?確かによくよく顔を見ればななしの面影がある。それにしても前よりずっとかわいくなった。俺は少しだけドキドキしながら返事を返す。



「ななし、なんだよな…?ちゃんと、覚えてるよ。それにしてもずいぶん変わったな。」


「そうかな?別にそうでもない気がするけど。」


「うん、変わった。前よりずっとかわいくなっててびっくりした。」


「ばっ、い、一朗太はすぐそういうこと言う!そういうとこ変わってないよね。この天然チャラ男め!」


「思ったことを口にしただけでなんで天然チャラ男なんて言われなきゃいけないんだよ!」


「だからそういうとこがさー…ああもういいよ。」


彼女が頭をガシガシ掻きながら立ち上がる。そして何を言い出すかと思えば


「じゃ、私帰るね。」



は?

俺は思わず気の抜けた声を出した。いやいやいや待て待て待て、あまりにも唐突すぎる。そんなことを突然言われても俺だって困ってしまう。俺はスタスタと早足で玄関に向かう彼女を引き留める。

「待てって。久々に会えたんだし、もう少しここにいればいいのに。」


「いや、私これからちょっと用事あるんだ。だから急がないと。でも久々に一朗太に会えて嬉しかったよ。また会うかもね。じゃあね。」


「え、ちょっとま、まてって、おい、」



バタン


ドアの閉まる音だけが虚しく室内に響いた。色々と展開が早すぎてついていけない。目覚めてから10分足らずで彼女は出ていった。なんだかななしはいつも唐突に去っていく気がする。…それにしてもまさか保護した女の子がななしだったとは驚きだ。彼女は引っ越したはずなのに。もしかしてこっちにまた引っ越してきたのだろうか。あ、そういえばななし、服が少し破けてたけど大丈夫なんだろうか。しかもまだ雨止んでないし。傘とか持たせればよかったかな。そんなことを考えつつ、俺は一番大事なことを聞きそびれた事に気づく。



なんでななしはあんな状態であそこにいたんだろう。



結局真相は何もわからないまま、謎は深まるばかりだった。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -