私は昨日何にもやる気が起きなかったので一日中ダラダラと怠惰な生活を送ってしまった。そんな私が課題という存在に気がついてから早二時間。現在の時刻は午後六時半。全く課題が終わる気配を見せない。今日は両親が不在だから夕食も自分で作らなくちゃいけないし、お風呂に入ったり色々したら確実にトータルで二時間は時間が無くなってしまう。それから私は電車通学だから12時には寝ないと電車に間に合わない。明日先生に課題家に忘れてきちゃいましたって事にしておこう。


夕飯の用意をするために立ち上がると、外から私の名前を呼ぶ声がしたので、窓を開けてみれば照美くんがいた。こんな時間に帰るということは、部活が長引いたのだろうか。


「やあ」
「部活長引いたの?」
「いや、ちょっと寄り道したからね。それよりおじゃましてもいいかい?」
「あ、うん!今行く!」


照美くんが私の家に来ることは初めての事ではないが、こんな時間に来ることは初めてであり、しかも今日は二人きりなので、私はちょっとだけいつもより緊張しているみたいだ(だって心臓がばくばくしてる)。


私は夕食を照美くんと食べた後、課題のことを思いだし、別の意味で心臓がばくばくしてきた。忘れちゃいましたってことにしようとは思ってもやはりこのままではいけない。焦った様子の私に気づいた照美くんが、どうしたのと言うので課題のことを話せば僕も手伝うよと言って視ていたテレビの電源を切った。






どうやら照美くんはもう課題をすべて終えたらしい。やっぱり学年トップはこういう面から私のような平凡な人間とは違うんだなと痛感しつつ、今度はもっと計画的に課題をやろうと思った。とりあえず一番苦手な数学のノートを開く。私がわからないところは全て照美くんが丁寧に教えてくれたので、1人でやるよりもずっとはやく終わった。次に復習問題(という名の課題)を出すと、照美くんがやけににこにこしながらこちらを見ている。



「…な、なんか私の顔についてるの?」

「いやそうじゃなくてさ、復習問題やるんだったらちょっと条件つけようかなと思ってさ。」

「条件って?」

「一問ごとに当たったら僕からご褒美のキス、外れたら罰として君からキス。どう?」

「どうって恥ずかしくてできないよそんなの!」

「ふーん、じゃあ僕はもう帰っちゃおうかな。」

「!わ、わかったってば!やる!やるから!」

「じゃあ決まりだね。」










照美くんが私の問題を解くところをじっと見ている。緊張してシャーペンを持つ手に汗が滲んだ。こんなんじゃ集中もまともに出来ない。でも間違えたら私からキスだ。私からキスするなんてことは絶対に避けたい(恥ずかしすぎる)。やっとのことで計五問解き終わり、照美くんに採点してもらう。

「なかなかの出来だね。」

そういって手渡された問題を見ると五問中四問正解一問不正解。一番最後の問題に思い切りバツがついている。…と、いうことは

「1回君からキスだよ。」

照美くんはこれまでにないくらいにこにこしている。
一番避けたいと思っていた事態が発生した。私は動揺してあたふたしていると、照美くんが近づいてくる。

「最初は僕の番だね。」
「え、ちょ、まっ…」
「待ったなし。」



照美くんが私の身体を抱き寄せて目を合わせてから小さく微笑む。私は何かにとり憑かれたかのように照美くんに見とれて、照美くんと唇を重ねる度に気持ちよくなって感覚が麻痺していくみたいだった。暫くして照美くんが私から唇を離すとまた微笑んだ。


「…ふふ、次は君の番だよ。」


そこで一気に現実に引き戻された。そうだ次は私の番だ。既に目を閉じて、しかし私の身体はがっちりと抱き締めたまま照美くんは私からのキスを待っている。

意を決してゆっくりと照美くんに顔を近づけていく。私からキスするなんてことは初めてなので、心臓がこれでもかというくらいに鼓動していた。あと5センチくらいのところでやっぱり恥ずかしくなってその先に進めなくて1人でもがいていると、照美くんが早くと私を急かした。気合いを入れ直してあと2センチというところで照美くんがいきなりぱっと目を見開く。


突然の事に驚いていると、「もう我慢出来ない。」と言って結局照美くんからキスをした。先ほどのキスよりも深くて息が苦しくなる。照美くんはまだ余裕そうだったけど、私は本当に苦しくなったので照美くんの胸板を叩くとそっと唇を離した。そして一度ため息をついて私を見つめた。



「…全く、結局僕からしちゃったじゃないか。」
「それ私のせいじゃないから!」
「君が僕を焦らすからいけないんだよ。」
「そんなこと言ったって…」



私が照美くんの肩に顔をうずめると、照美くんはくすくすと笑って私の頭を撫でた。



「そういえばあとどのくらい課題が残っているんだい?」
「あと英語がすこしだけ。」
「じゃあまた条件付きでやる?」
「も、もういいです!」

照美くんが私を撫でていた手を止めて私を抱き締める。

「…今日泊まっていっちゃおうかな。君、一人なんだろう?」

「いいけどベッド1つしかないから布団運ぶの手伝ってね。」

「そんなことしなくても一緒に寝ればいいじゃないか。」

「えっ、で、でも」

「そうと決まればまずお風呂に入ろうか。あ、僕の着替えの服は心配しなくてもいいよ。元々今日は泊まるつもりで来たからね。」

「だから寄り道したの…ってお風呂は別々!」

「じゃあ行こうか。」





結局その後も色々と照美くんに上手いこと言いくるめられて振り回されっぱなしになってしまったことは言うまでもない。そんな彼でも嫌いには絶対になれないのだけれど。

(惚れた弱みってやつ?)









恍惚
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ちょっと強引な照美
ありがちネタ^^


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