あれからなんだかんだで結局私は亜風炉照美と一緒に帰っている。初めて知ったことだが彼の家は思ったより私の家に近かった。なんだかよくわからないでかい家があると思ったらあれは彼の家だったのか。なんとなく納得してしまう。私は特に彼と話すこともないので自分から話題を振ることは無かったが、彼がべらべらと話続けるので沈黙が流れることはなかった。その前に彼はこんなに饒舌だったかと驚いたのだが。
案外彼の話は面白かった。彼は私が知らないことを沢山知っていた。私は適当に相槌をうちながら聞いていると、ふと彼の足が止まった。見ればそこは私の家の前。


「ここ、確か君の家だよね。」
「なんで知ってるの?」
「神様だから。」
「インチキくさい。」
「そうそう。そうやってちゃんともっと僕と話してくれると嬉しいんだけどな。」
「うーん…」
「やっぱり僕が嫌い?」
「苦手。」
「なんで?」
「なんか。」


それじゃあ答えになっていないよとため息をつきながら彼が呟く。確かになんで自分はこんなにも亜風炉照美という人間が苦手なのかよくわからなくなってきた。容姿端麗、頭脳明晰、なんでもできて女の子にもてる。いや、そんなことが私が本当に彼を苦手とする理由ではないはずだ。なぜかいつも感じる違和感。それがまだわからずにいる。もっとも彼の本質が掴めないような部分は確実に私が彼を苦手とする理由のひとつではあるが。


「なんか亜風炉くんをみてると違和感を感じるんだよね」
「どこが?」
「なんか。」
「ふふ、また答えになっていないよ。」

おかしな人だねと言って彼は初めて声を出して笑った。その時私は彼が、亜風炉照美がすごく好きだと思った。一瞬で惹き付けられて、魅力された。私の鼓動がはやくなる。ただ彼が笑っただけじゃないか。それなのに、それなのに笑っている彼から目が離せなくなった。自分は恋したのだと思った。


その時クラスメイトの1人がたまたまこの道を通り、亜風炉照美の名前を呼びながら手を振った。彼も笑顔でクラスメイトに手を振り返す。改めて見た彼に対して私はそれまでもっていた熱が一気に冷めて再び違和感を感じた。やっぱり恋したというのは錯覚だったのか。でもあのとき笑った彼の顔が頭から離れなくて、なんだか不思議でたまらなかった。


そんなふうにもやもやしつつも自分の家の前でずっと立ち話しているのもなんだと思い、彼に軽く別れを告げてから家に入る。閉じるドアの隙間から見えた、私に手を振り返したときの彼はなんだか私がいつも苦手だと思っているいつもの彼だった。


(あれは一体なんだったんだ)


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