私はジャンルカくんの事が好きなのだけれど、ジャンルカくんは色んな女の子にもてもてだったし尚且恥ずかしくて話せなくてなかなか進展がない。私はフィディオの幼なじみだから、その事をフィディオに言ったらじゃあ俺が話す機会作ろっか?なんてことを言われたけどやっぱりいきなり話すとかそういうのは恥ずかしくて、フィディオの提案を断った。
そんな私を見てフィディオは「恋すると人間変わるもんだな。いつもはこんなおしとやかな感じじゃないのに。」だって。一言余計だ。



また別の日、私はオルフェウスの練習を見に行く事にした。もちろんそこにはジャンルカくんもいるわけだから、できるだけ可愛い格好をしていきたくて、少し準備に時間がかかったけどちょっと髪の毛を巻いて、鏡で何度も確認してから出発。サッカーをしているジャンルカくんはやっぱりかっこよくて私はつい見とれた。まわりにいた他の女の子はフィディオの事を応援している人が多かったけど、私にとっては幼なじみのフィディオより、ジャンルカくんの方がずっとかっこよく見えた。

そんなふうにずっとジャンルカくんを見ていたら、ジャンルカくんがこちらに振り向いたではないか。私は心臓が飛び出ちゃうかと思った。ばっちり目が合うと、ジャンルカくんは小さく微笑んで、こちらに手を振った。私も振り返したけどまわりの女の子達が「いまジャンルカがあたしに手を振ってくれた!キャー!」とか言っているので、本当のところ私に手を振ってくれたのかは謎となってしまったけれど、私はいまでもどきどきして落ち着かなかった。



それからなかなかジャンルカくんを直視出来なくて、まともに試合自体も見れなくなって、私はぼやっとしながら試合を観戦するというより見つめている状態だった。すると「危ない!」という声がして目の前を見ればすごいスピードで迫り来るボール。避けきれるはずもなくそのボールは私の顔面に直撃した。なかなか痛かったけどまぁ耐えられない程ではない。と思っていたら鼻血が出ていることに気づいた。そんなわけであたふたしていると「大丈夫か!?」と走りながらジャンルカくんがこちらに向かってくる。私は鼻血が出た顔なんて見られたくなかったから急いで顔を隠す。「だ、大丈夫だよ。」と返したがジャンルカくんは尚も心配そうな目で私を見ている。



「鼻血、出てるんだろ」と言ったのはフィディオ。いちいち余計な事ばっかり言う…!と思い一瞬恨んだが、「ジャンルカ、保健室に連れていってやってくれ。」と言ったフィディオは私の中で一瞬にして神様になった。「ああ。」と言ってジャンルカくんが私を保健室に連れていく。隣同士は少し恥ずかしかったからジャンルカくんの二歩ぐらい後ろを歩いてついていった。


鼻の上あたりを冷やしつつ、一通りの手当てを済ませると私もジャンルカくんも喋らないからなんだかちょっと気まずかった。
「…ほんとにごめんな。」沈黙を破ったのはジャンルカくん。「大丈夫、このぐらい平気だよ。」とできるだけ元気に言った。それにしてもさっきからどきどきしっぱなして心臓がどうにかなってしまいそうだ。こんなにまともに話したりしたのなんて初めてだし。ぐるぐると思いを巡らせているとジャンルカくんが急に立ち上がって私の前に立ち、真剣な表情で私を見た。

「…なあ、君はフィディオが好きなのか?」

それは私にとって思いがけない一言だった。少し呆然としてしまったが、へんな誤解は招きたくなかったのでとっさにちがうと否定すればいままでみたことないくらいやわらかく微笑んで「そうか。」とだけ答える。そしてそれだけ言うと、ジャンルカくんはまた黙り込んでしまった。なんだかやっぱり気まずくて何か話そうと思って焦っていると今度はジャンルカくんが椅子に座っている私の目線と合う位まで腰を屈め、そして私の頬を両手で包んだ。
さらに突然のことに私は目を見開く。顔と顔の距離が近い。心臓の音がうるさいくらいドキドキしていて自分の顔が赤くなっていくのがわかった。

「こんなふうにちゃんと話したりするのは始めてだけど、」

ジャンルカくんがそのまま私の額と自分の額をくっつける。

「俺さ、君のことを初めて見たときから好きなんだ。よければ付き合ってくれないか?」

ジャンルカくんが言った言葉を頭の中で反芻し、声がでないくらいドキドキしていたので返事のかわりに小さく頷く。
ジャンルカくんは小さく掠れ気味の声で「Ti Amo」と囁きそのまま私にキスをした。










キャパシティーオーバー


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