わたしと風介が付き合ってもう半年経った。わたしには風介のことで悩みがある。別に風介の事が嫌いなわけではない(むしろ前より大好きだ)のだけれど、風介はなんというかシャイで恋愛に対して消極的なようで、自分からは絶対に手を繋いだりキスしたりしてくれない。そのくせ嫉妬深いところがあったりするので結構扱いがめんどくさい事も多い。付き合いはじめの頃はそんな人なんだと思っていたし、別に好きだからそんなことは気になっていなかったのだけれどわたしもやっぱり彼女として風介からキスとか色々して欲しいわけであって、考えれば考えるほどその欲求は大きくなって、いつの間にかこれは私の悩みの種となっていた。


「はぁ…」

放課後、私はいつも風介の部活が終わるまで教室で1人残って待っている。理由は勿論一緒に帰るためだ。普段は勉強するなどして待っているのだが、そんな考え事をしながら待っていたら自然とため息が出てしまった。すると教室には誰もいなかった筈なのに上から声が降ってきた。

「なんか悩みでもあるの?」

そう言ってきたのは同じクラスのヒロトくん。ヒロトくんが帰ってきたってことは風介もそろそろ帰ってくるのかな。そんなことを思いつつ返事を返す。

「ううん、大丈夫。」

これはわたしの悪いところだ。言いたいこととか悩みがあっても絶対に人に話せない所。この性格のせいで一体何度悩んだ事か。でもヒロトくんはそんなわたしを見透かしたかのように「嘘。なにか悩んでるでしょ。俺で良ければ聞くよ。」なんてこというものだからヒロトくんとは仲良いし、彼は私と風介が付き合っていることも知ってるから、お言葉に甘えて悩んでいることをそのまま話してみた。ヒロトくんはそれを親身になって聞いてくれたからわたしは少し気持ちが楽になった。やっぱりこういうことは話してみるものだと改めて実感。

「ありがとうヒロトくん。なんかすっきりした。」

「それは良かった。でね、俺、思ったことがあるんだけどいいかな?」

「なに?」

「…とりあえず風介が来るまで俺と向かい合わせに立っててくれればいいよ。」

「?うん。」

それからほんの少しして風介が歩いてくる音が聞こえた。ヒロトくんに風介来たから帰ってもいい?と聞いたのだがそのまま待っててとのことなのでとりあえずそのままの状態で待つ。向かい合わせだから少し恥ずかしいけど。するとヒロトくんは風介が教室のドアを開けた瞬間ヒロトくんが私を抱きしめ、わたしは突然のことに頭がついていかずそのまま固まってしまった。

「遅くなってすまな……!」

風介はドアを開けた状態のまま固まっている。そりゃそうだろう。自分の彼女が教室に帰ったら別の男(しかも自分と親しい奴)と抱き合っているのだから。わたしはちょっと風介に対する罪悪感でいっぱいになったがとりあえずそのままヒロトくんに従うことにした。

「俺はね、君のことが前から好きだったんだ。多分そこにいるやつよりも。」

ヒロトくんは風介の方をちらりと横目で見て言う。こんなこと言ったら風介が絶対怒るだろ…と思い体勢は変えずに風介の方を見ると風介の体が若干震えている。ちょっとどころかかなりやばいと思ったがそれよりもすぐに風介がヒロトくんから私を離すとかそういう事をしなかったことに私は悲しくなった。

そんな事を考えているとヒロトくんがそのまま顔を近づけて私にキスをしようとする。どきどきしたが、さすがに今度こそやばいと思い、ヒロトくんの身体を押す。が、びくともしない。冗談だとわかっているのに私は少し怖くなった。

「ヒロトく…やめ…っ…!」

突然身体をぐいっと引かれ、わたしは風介のからだのなかにすっぽりとおさまった。風介にこんなことをされるのは初めてだったので、私はさっきの悲しさなんて忘れてうれしくなってしまった。

「ヒロト!…こいつはわたしのものだ。勝手に触るな!」

そう言ってさらに抱きしめる力を強める。私はどきどきしっぱなしだった。そしてヒロトくんはアッサリと「風介はいつもそういう風に素直になった方がいいよ。」とだけ言って帰ってしまった。

残された私達はと言うと風介が無言私を抱きしめ続けている。私はなんだかこの空気に耐えられなくなってきて、風介、と呼ぶと、風介は顔を真っ赤にしながら身体を離した。そして表情はみるみる怒りの表情に変わり、「まったく!お前というやつは!」と怒鳴られてしまう始末である。

それになんだか私はむっとしてしまい、さっきのどきどきを返せ!と思いつつ風介が自分からキスとかしてくれないからああなったんだからとか今までの不満をここぞとばかりにずけずけと言ってしまった。言い終わってから我に帰り、やばい風介に怒られる!と思って身を屈めるがなにも起こらない。不思議に思って前を見れば先程みたいに赤面した風介が立っていた。私は驚くばかりだ。

「そ、それは、その、すまなかった。」

風介が本当に申し訳ない感じで言うものだからなんだかちょっとかわいそうになる。だけどこのチャンスを逃す訳にはいかないのだ。これからの私達のためにも。

「じゃあ、風介からキスしてよ。」
「!!!」
「はやく!」
「………」
「…いーよ、わかった。じゃあね風介さよなら」
「ま、まてっ!…〜っ」

ほんとにほんとに短いキスだったけど初めて風介からキスをしてくれた。私は顔のにやけがおさまらなくてどうしようかと思ってしまった。何よりとにかく嬉しい。風介はというと見たこともないくらい赤面してその場にしゃがんでいる。

「風介、今度から風介からキスしてくれないと一生キスしないからね。あと抱きしめたりもしないから。」
「そっ…それとこれとは…」

「いいの?あたしはやだ」

「…わ、わかっ、た」


そのあと一緒に帰ってるときに風介から手を繋いでくれた。風介は相変わらず赤面しっぱなしだった。そんな風介を見て、まだまだ色々と時間はかかりそうだと思いつつ、私は一人溜め息をつきながらも微笑んだ。






理想の愛の育て方
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風介はウブだといい。



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