「もうマークなんか知らない!どっかいっちゃえ!」


話は二時間前にさかのぼる。私は買い物に行っていた。マークと出掛けようとしたらマークは用事があるみたいで断られ、友達と一緒に行こうかなとも思ったけど、それよりは一人で出掛けたいと思ったので一人だったけど。
この前からずっと狙っていたワンピースやサロペット、ストールなどを買い、他にも必要な文房具とか一通りの買い物を済ませてわたしはとても上機嫌だった。


(このスカート、今度マークとデートするときに来て行こ!)なんてことを考えながら歩いていると、人混みの先になんとマークがいるではないか。見間違えるはずがない。綺麗な金色の髪の毛にグリーンの瞳。確かに彼だ。でもなんでマークがいるんだろう。今日用事あったんじゃなかったのかな。そんなことを思いつつマークに駆け寄っていったのだが、



「……は?」


わたしはその場に立ち尽くした。なんとマークが女の子(しかも一人じゃなくて五人くらい)と一緒にいたのだ。意味がわからない。用事ってこの事!?他の女の子と遊ぶためにあたしの誘い断ったの?しかもなにあれ!女の子五人とかふざけている。わたしはカッとなって物凄くマークをぶん殴ってやりたい衝動に駆られた。だけどすこし冷静になって考えると、そんなことをして惨めになるのは自分だったので、仕方なくそのまま帰ろうと思った。すると私の視線に気づいたのか、こちらを振り向いたマークと目があう。わたしはここぞとばかりに思いっきりマークを睨み付けて走って家に帰った。そして今に至る。




わたしは今日買ったかわいい洋服などを袋に入ったままぶん投げて放置し、ベッドに横たわって枕に突っ伏した。そしてため息をひとつ。

「…なんなの。」

明日は女の子と出掛けなきゃいけなくなったんだとか一言言ってくれれば(本当は嫌だけど)仕方ないかと思ったりもできる。だけどそれをいわないでこっそり出掛けるってどうよ。マークがモテるのはわかる。いや、わかってたよ、でも、どうして?

だんだん怒りよりも惨めさとか悲しさの方が上回って自然と涙がでてきた。マーク、わたしに飽きちゃったのかな。思い返せばあのあと追いかけてきたりしなかったし。もしかしたらもう嫌われちゃったかも。思えば思うほど涙がでてきて止まらなくて悲しくてだけど悔しくて。涙はいつのまにか枕に大きな染みをつくっていた。

「…マークなんか、だいっきらい。」

「俺はだいすきなんだけどな。」


突然上から降ってきた声にわたしは言葉を失った。そこには私を見下ろして微笑む彼が。なんで、なんでマークがここにいるの?意味がわからなさすぎる。

「なんで…」

「なんでって、家の鍵空いてたよ?女の子一人なんだからもっと用心しなきゃ」
「不法侵入だ」

「だって君が思いっきり俺を睨むからさ。これでも急いで来たんだよ。」

そういってマークは至って普通にわたしのベッドの上に上がりわたしを抱き締めようとする。わたしはその手を払いのけて「マークあたしのこと嫌いなんでしょ、飽きちゃったんでしょ…!」ついでに今日女の子五人と一緒にいたのしっかり見たんだからねと言ってやった。そしてすぐ後悔した。こんなねちっこい女もっときらわれちゃう。ほんとに自分が嫌になる。するとまた涙が溢れてきてぐっと堪えたけど結局こぼれおちてしまった。


マークはため息をついた。ため息をつきたいのはこっちの方だバカヤロウ。するとマークは今度は強引に私を抱き締めて「さっきもいったじゃん。俺はきみがだいすきだ、って。」そしてわたしの目を見た。マークの目はいつも通り綺麗だったですごくまっすぐで、本当に想ってくれてるんだなと感じた。マークはそのまま女の子とはたまたま鉢合わせただけだということ、ついでに(ついでにっていうのもどうかと思うけど)プレゼントを選ぶ手伝いをしてもらったことを話してくれた。


全て聞いた後、私は誤解していた自分に恥ずかしくなって、嫉妬してた醜い自分が馬鹿馬鹿しく思えた。恥ずかしくなってうつむくと、マークがわたしの顔を無理矢理上げてキスをする。私は別の意味でもっと恥ずかしくなって、手のひらで顔を隠した。


マークはそんなわたしの様子を見て今度は嬉しそうに「ねぇ、嫉妬したんでしょ。」と意地悪な顔で言うものだから言い返すことなんかできなくて、ただマークに「マークのばか」としか言うことができなかった。


「やっぱりきみは本当にかわいい。誰よりも。だから嫉妬なんかしてくれて俺は嬉しいよ。俺ばっかり好きなのかと思ってたから。」
言われたこっちが恥ずかしくなる言葉をサラリといいのけて、わたしの耳に小さくキスして左耳にピアスをつけた。そして自分の右耳をみせる。「おそろい、だよ。」


わたしとマークの耳元で綺麗に光る銀のピアスは確かにわたしはマークと繋がっているんだなと思わせてくれてわたしは嬉しくなった。わたしはマークを抱き締めて、今度は私からキスをする。「あたしだってだいすきだよバカ」って言ったらとマークも顔を真っ赤にしたからついでに「おそろいだね」っていってやった。






baci e abbracci
(キスと抱擁をあなたに)



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