ほぼ友雅ログ ◇「優先順位」 神子でないとはいえ真面目な彼女の事…まずは京の平和。次に仲間の安寧。その次くらいかな、私は。「大事なものの順位?私は友雅さんが居ればいいですけど。…友雅さん?友雅さ…顔があか「黙って」顔が見えない様に抱き締めれば私の為に焚いたという侍従が薫った。 ◇「死ぬまでの君を全てください」 彼女に愛を囁かれても尚足りないと思う私はなんて強欲な男だろう。「大好き」「まだだ」「愛してる」「足りないよ」「じゃあ…死ぬまでの私全部、友雅さんにあげる」「…本当に?」「これからゆっくり証明してあげますよ」―――その笑みにまだこの愛に先があるという幸福を知る。 ◇「砂糖菓子のように甘く」 「君の唇はどんな物より甘美だね」…私はその台詞の方が甘いと思います。「愛しい姫君」ああ、声も甘い…甘いなぁ。「…今、何を考えてる?」「今日のおやつは甘い果物だと良いなと」「食い気か…君は本当に果実が好きだね」呆れながら微笑む顔も、砂糖菓子のように甘ったるい人。そんな貴方が、「大好きですよ」 ◇「その色は誰の色?」 彼女の手に握られた紙の色、その色を好いていると言っていたのは誰だったか……少なくとも自分ではない。「誰かに文でも?」「いえ、好きな色なので貰ったんです」「君の…そう。では今度その色で文を贈るよ」「じゃあ銀色で返しますね」「おや…君には敵わないね」 ◇「惚れ直した?」 屋敷前に居た友雅さんはいつもと違う服装。髪は結い上げて烏帽子に収め緋の衣をきっちりと着こなし片手には弓。「どうしたんですか、その格好」「仕事中なだけさ」へぇ、とじろじろ見ていると友雅さんが笑みを零し「惚れ直した?」と聞くので「まず惚れてません」と平然と嘘をつく。 「頼久など私と分からなかったのだが君は分かってくれたね」え、だって背格好や髪色や…何より、「香りが…」「香り?」「な、何でもないです」誰の物とも違う貴方の香りを覚えているなんてそれこそ惚れてると言ってしまうようなものだ。私はボロが出ないうちにそそくさとその場を後にした。 ◇「全部全部、君のせい」 (保健教諭パロ) 先生がこんな情熱的だなんて知らなかった。呼吸も困難な程口付けられ酸素の薄くなった頭で考えても壁際に追い詰められた私に逃げ場がない事は明白で。「全部…君のせいだ。逃がさないよ」妖しい光を宿す瞳に魅入られて足も動かない。標的をとらえた先生は満足げに微笑んだ。 ◇「逢うたび」 女癖の悪い男の人って思ってた。けれど八葉の勤めの為に毎朝訪れるその人は、何も出来ない私にも笑みをくれる。気遣ってくれさえした。表面だけの態度だと分かっても嬉しくて、その姿を一目でも見れると心躍った。繰り返されるうち積もり積もって恋をして、こんなにも今、胸が苦しい。 ◇「(そんな不意打ち、ずるくないですか?)」 鳥のさえずりが耳に届き意識が覚めた。 まだ浅き眠りの淵をさ迷っているとすぐ隣から衣擦れの音。先に彼が起きたのかもしれない。分かっても瞼は重く開けるには至れずに寝返りを打って仰向けになるに留まった。 ふいに、ふわり柔らかい感触が頬を撫ぜる。 あ、口付けられるかも、と思った。 触れたのは彼の髪だと分かったから。 まだぼんやりする頭で腕を広げれば彼の身体の何処かに当たり掌で確かめれば胸板で。瞳を閉じたまま手を上へと這わせて首を抱き寄せた。彼は一瞬身を固くしたけど私の好きにさせてくれるようで、それを良い事に慣れた感覚で唇を寄せ、彼の柔らかいそれに合わせられると満足してすぐに離した。 目覚めの億劫さもなくなり、瞼を開ければ彼らしくもなく頬を上気させて驚いた様に目を見開いていた。 その顔が想像以上に可愛らしくて緩む頬が抑えられない。 だって、大人の彼が照れるなんて……、 「ずるいね、君は…」 「友雅さんの方がずるいですよ」 とある朝の、珍しい顔を見せてくれた彼の話。 翡翠夢 ◇「反則だらけ」 「いたぞ!」「ふむ、今日はこれでお別れだ…またね、愛しの姫君」「あ…」甘い微笑みを残して颯爽と姿を消してしまったその人は、伊予の海賊。そして、私の心を奪っていった反則だらけの大罪人。再び逢えるのはいつの日か…僅かに身に付いた残り香をひとり静かに抱き締めた。 |