友雅夢、銀時 | ナノ

いみてーしょんぱひゅーむ


『これで意中の彼もイチコロ!?』
『片思い中だった彼とラブラブとなったAさん』
『今なら価格はお手頃…』

「…はぁ」


吉原で起きた「惚れ薬」による一種のテロとも呼べる大事件。
それは、表立ってはニュースにならなかった。
元とはいえ地下世界で起こった出来事であったこと、一部の幕府関係者も巻き添えを食らった為に大々的に取り上げる事は上からの圧力によって阻まれたことが要因であった。
ネタに飢えたゴシップ雑誌なんかが面白おかしく取り上げて、それでおしまい。
世間的にはそれで事なきを得ていた。

ただ、何処かの胡散臭い業者がそこに目をつけたのか、「愛染香」の安全な模倣品と謳った「恋染香」なるものを作り上げ、女性誌の広告枠にでかでかと宣伝していた。
千紗も普段なら読み終えた女性誌のついでに目を通すくらいで、やれやれまた変な物売り出して、と受け流せていたが、今回はそうはいかなかった。
部屋の壁にだらりと凭れ掛かって、その広告にある香の値段と自分の財布と相談する千紗…。

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